2017.04.07

湯元健一が2008年北京オリンピック銀メダルに繰り上げ…60kg級銀メダリストと“オリンピック3連覇”選手にドーピング違反

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 国際オリンピック委員会(IOC)は4月5日、2008年北京オリンピックのメダリストのドーピング再検査により、男子フリースタイル60kg級銀メダルのワシル・フェドルイシン(ウクライナ)と同120kg級金メダルのアルトゥール・タイマゾフ(ウズベキスタン)が陽性反応を示し、失格処分にしたことを発表。世界レスリング連盟(UWW)に順位を修正するよう要望した。ともに筋肉増強剤の成分が検出されたという。

 IOCのリクエストを受け、UWWは6日、公式ホームページで男子フリースタイル60kg級銅メダルの湯元健一選手(当時日体大助手=現日本文理大職)が銀メダルに繰り上がることを発表した。

 同選手は準決勝でフェドルイシンに0-2(2-3,0-1)で黒星(注=当時は2分3ピリオドの2ピリオド先取制)。その後の3位決定戦で勝って銅メダルを獲得していた。同大会では、男子フリースタイル55kg級の松永共広選手とともに、日本は男子2選手が銀メダルとなった。

 湯元選手に敗れて5位だったバザール・バザルグルエフ(キルギス)が3位へ繰り上がる。

 タイマゾフは2004年アテネ大会と2012年ロンドン大会でも優勝しており、オリンピック3連覇達成選手だった。今回のIOCの決定により、リオデジャネイロ・オリンピックの男子グレコローマン130kg級で男子4人目の3連覇だったミハイン・ロペス(キューバ)が3人目の達成選手となる。

 同級は2位だったバクチアール・アクメドフ(ロシア)が金メダル、3位のうちタイマゾフに敗れていたダビッド・ムスルベス(スロバキア)が銀メダル、ムスルベスに3位決定戦で敗れて5位だったデズニー・ロドリゲス(キューバ)が銅メダルに、それぞれ繰り上がった。

 IOCは、2008年北京大会と2012年ロンドン大会で採取した検体を最新の分析技術によって再検査し、重量挙げや陸上などで多くのメダリストを失格処分としている。レスリングでもメダリストを含めて何件かのドーピング違反が挙げられていた。

 メダリストとしては、昨年10月に2008年北京大会の男子フリースタイル74kg級2位のソスラン・ティギエフ(ウズベキスタン)と同96kg級2位のタイムラズ・ティギエフ(カザフスタン)が失格処分へ。UWWは当初、それらの順位を空位としたが、その後、下位の選手を繰り上げた。

 11月には同大会の男子グレコローマン60kg級銀メダルのビタリ―・ラヒモフ(アゼルバイジャン)、同96kg級銅メダルのアセット・マムベトフ(カザフスタン)、同120kg級銀メダルのハサン・バロエフ(ロシア)にそれぞれ違反があり、いずれも順位剥奪。下位の選手が繰り上がった。

 同時期に2012年ロンドン大会の男子フリースタイル60kg級銀メダリストのベシク・クドホフ(ロシア)にもドーピング違反が認められたが、クドホフは2013年末に交通事故死しており、メダル剥奪なしの“温情判決”が下された。

 IOCは、リオデジャネイロ大会で採集した検体も、いずれ最新技術によって再検査する予定。トーマス・バッハ会長(ドイツ)は「ドーピングと闘うIOCの決意」と話し、薬物使用の逃げ得は許さない姿勢を示している。