※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
国際オリンピック委員会(IOC)は4月5日、2008年北京オリンピックのメダリストのドーピング再検査により、男子フリースタイル60kg級銀メダルのワシル・フェドルイシン(ウクライナ)と同120kg級金メダルのアルトゥール・タイマゾフ(ウズベキスタン)が陽性反応を示し、失格処分にしたことを発表。世界レスリング連盟(UWW)に順位を修正するよう要望した。ともに筋肉増強剤の成分が検出されたという。 2008年北京オリンピックの準決勝でワシル・フェドルイシン(ウクライナ)に敗れた湯元健一だが、この勝敗は無効。湯元が銀メダルとなった
同選手は準決勝でフェドルイシンに0-2(2-3,0-1)で黒星(注=当時は2分3ピリオドの2ピリオド先取制)。その後の3位決定戦で勝って銅メダルを獲得していた。同大会では、男子フリースタイル55kg級の松永共広選手とともに、日本は男子2選手が銀メダルとなった。
湯元選手に敗れて5位だったバザール・バザルグルエフ(キルギス)が3位へ繰り上がる。
タイマゾフは2004年アテネ大会と2012年ロンドン大会でも優勝しており、オリンピック3連覇達成選手だった。今回のIOCの決定により、リオデジャネイロ・オリンピックの男子グレコローマン130kg級で男子4人目の3連覇だったミハイン・ロペス(キューバ)が3人目の達成選手となる。
同級は2位だったバクチアール・アクメドフ(ロシア)が金メダル、3位のうちタイマゾフに敗れていたダビッド・ムスルベス(スロバキア)が銀メダル、ムスルベスに3位決定戦で敗れて5位だったデズニー・ロドリゲス(キューバ)が銅メダルに、それぞれ繰り上がった。 北京でオリンピックV2を達成したはずのアルトゥール・タイマゾフ(ウズベキスタン)だが…
メダリストとしては、昨年10月に2008年北京大会の男子フリースタイル74kg級2位のソスラン・ティギエフ(ウズベキスタン)と同96kg級2位のタイムラズ・ティギエフ(カザフスタン)が失格処分へ。UWWは当初、それらの順位を空位としたが、その後、下位の選手を繰り上げた。
11月には同大会の男子グレコローマン60kg級銀メダルのビタリ―・ラヒモフ(アゼルバイジャン)、同96kg級銅メダルのアセット・マムベトフ(カザフスタン)、同120kg級銀メダルのハサン・バロエフ(ロシア)にそれぞれ違反があり、いずれも順位剥奪。下位の選手が繰り上がった。
同時期に2012年ロンドン大会の男子フリースタイル60kg級銀メダリストのベシク・クドホフ(ロシア)にもドーピング違反が認められたが、クドホフは2013年末に交通事故死しており、メダル剥奪なしの“温情判決”が下された。
IOCは、リオデジャネイロ大会で採集した検体も、いずれ最新技術によって再検査する予定。トーマス・バッハ会長(ドイツ)は「ドーピングと闘うIOCの決意」と話し、薬物使用の逃げ得は許さない姿勢を示している。