※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 法大から5年ぶり優勝の谷山菜緒と押田博之監督
谷山の過去の成績を振り返ると、2位や3位がずらりと並ぶ。谷山が経験してきたのは1位が代表になれる世界カデット選手権や世界ジュニア選手権ではなく、2位が派遣されるアジアの舞台だった。「アジアの代表ばっかりで悔しかった」と奮起するも、成績が伴わなかった。
勝ち切れない原因を谷山は「後半、失速するタイプ。スタミナもメンタルも。練習中でも注意されるくらいです」と分析する。それが今回は見事に克服。「意地でした。最後まであきらめずに集中して試合ができました。失点しても取り返せた」と、成長した自分に満足そうな笑顔を見せた。
セコンドには元世界選手権代表でアジア大会2位の実績を持つ小島豪臣コーチの姿があった。昨年から法大のコーチに就任し、チーム全体の底上げに着手している。
セコンドに就いた元世界選手権代表の小島豪臣コーチ
谷山は、関西の強豪キッズクラブのエンジョイ(大阪)から香ヶ丘リベルテ高を経て昨年法大に進学した。「レスリングをガツガツやるというより、自分のペースでやりたかった。勉強面やセカンドキャリアなど総合的に考えて法大を選びました。もちろん、レスリングをしっかりやるつもりで来ました。法大でも勝てるというところを見せたかった」。
渡りに船だったのは小島コーチが専属コーチとして就任したこと。「高校までは体力が一番だったけど、大学に入って技も増えたし、細かい技術も身につきました」。今シーズンから小島コーチはほぼ毎日練習を見てくれることになるようで、谷山のレベルアップも見込めそう。「この環境、とてもありがたいです」と振り返った。
階級を51kg級に落とした理由は「ジュニアは今年が最後。55kg級で勝つにはスタミナやパワーが劣っていたので、減量して優勝を目指しました」と勝負をかけたからだ。
決勝で闘う谷山
次の試合は今月22日からのJOCジュニアオリンピックカップ(横浜市)の51kg級を予定。同級には本来48kg級の加賀田葵夏(青山学院大)がエントリーしている。「中学時代ずっと勝てなかった加賀田選手と久々に対戦する可能性があります。自分が階級を上げてから対戦する機会がなかった。上の階級にいるパワーで、今度こそ勝ちたいです」。
ライバルだった加賀田は中学初の6冠女王として最強だった。今でも48kg級で学生チャンピオン、全日本2位と好調を維持している。久々のライバル対決の行方が楽しみだ。