※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
全国高校選抜大会の学校対抗戦で、創部2年にして初優勝を遂げた日体大柏(千葉)。個人戦も大暴れで、50kg級の谷口龍我、55kg級の山口海輝、96kg級の白井達也と3階級で優勝した。そのうち2年生(新3年生)は谷口と山口。高校最後のシーズンを好発進した。
■「今年こそ全部勝って、三冠王者になりたい」…山口海輝 同門決戦を制して優勝した山口海輝(日体大柏)
山口は「本番では、とにかく緊張してしまって練習のような思った動きができていない」と、極度のあがり症であることを告白。「今回の決勝でも、去年のインターハイで投げられた記憶が出てしまって」と、負のスパイラルに陥りそうになった。
集中力に欠けていたり、ネガティブなことを思い出したりして負けることが多かった山口が、集中力を高めるために取り入れたのが深呼吸だ。「自分でもいろいろ調べて、今回は深呼吸を多めに取り入れました」と、自分を見失わずに試合を展開。決勝戦は同門対決だったことから、「思った以上に楽しめました」と圧勝することもできた。
気がつけば、もう高校のラストシーズン。「今年こそ全部勝って、三冠王者になりたい」―。山口は日体大柏初の高校三冠王者になれるか―。
■控えメンバーからチャンスを生かして日本一へ…谷口龍我
今大会一番のシンデレラボーイとなったのは、50kg級の谷口龍我だろう。学校対抗戦での優勝は、大澤友博監督が「50kg級が勝って勝利を確信」と谷口をたたえたように、優勝のかぎを握った選手だ。 優勝を決め、大沢友博監督に抱き着いて涙にくれた谷口龍我
谷口は、レギュラー落ちの理由を「大澤先生から『50kg級は流れを作る階級だけど、その安定感がない』と言われました。だから今回、決勝で抜擢された時は、前につめて泥くさくてもいいから勝って、後ろにつなげることばかりを考えていました」と言う。課題を克服して大仕事をやり遂げた。
学校対抗戦の勢いは個人戦にもつながった。「全国の舞台がすべて初めてで気負うことなく、開き直って戦えました。団体戦も出ていたので個人戦で緊張することもありませんでした」。
決勝戦では国体王者の森川海舟(東京・自由ヶ丘学園)と対戦し、追う展開となったが、「2月の関東選抜大会のときはテクニカルフォールで負けたけど、そこで対戦していたので、その時の反省点を思い出して闘った。手足が長い選手なので、自分の距離にすれば闘えると思った」と間合いを詰めて終盤にラッシュ。この作戦が見事にはまって6-6と追いついて、ラストポイントで勝利した。
激しいレギュラー争いがある日体大柏だが、選手間の絆も垣間見えた。「決勝前、(準決勝で森川に負けた)竹下からの励ましがあり、(昨年レギュラーの)服部からも声をかけてもらった。みんなの声援で、心に余裕ができた」と、仲間への感謝の気持ちも忘れなかった。