※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) 悲願の全国一を勝ち取った安楽龍馬(山梨・韮崎工)
「準決勝(米澤凌=秋田・秋田商)が勝負だと思っていた。たまたま勝てて、あとはいけるかな、と。決勝は焦ることなく闘えました」と、控えめに振り返った安楽。「たまたま」という言葉は謙遜と思えるが、「中学で同じチーム。お互いに手の内を知っていて、1点差とかで勝ったり負けたりしている相手です。本当に、たまたまタックルが決まったんです」と強調した。
組み合わせは、世界カデット選手権フリースタイル63kg級3位で昨年の国体優勝の基山仁太郎(三重・いなべ総合学園)、昨年2位の米澤と同じブロック。強豪が固まってしまったが、不幸中の幸いは基山と米澤がつぶし合う組み合わせだったこと。
ふたを開けてみると米澤が勝利。激戦でスタミナを使い果たしたであろう米澤と準決勝で闘うことになった。しかし、前述の通り、これはこれで嫌な対戦相手だった。その分、決勝は「いつもの力を出せば勝てる」と、ある程度の自信を持って闘えた。「1点を失ったことが反省材料?」の問いに、「そうですね」と否定しなかった。
■フリースタイルで強くなるために、グレコローマンに力を入れた
グレコローマンに力を入れている韮崎工。グレコローマンで世界へ飛躍しているので、今後はグレコローマンを主にやっていくと考えられたが、「大学ではフリースタイルをやりたい。フリーで強くなるにはグレコローマンの強さが必要。両方強くなるために韮崎工に進みました」と言う。 決勝は9-1で快勝。今後もグレコローマンを強化しつつ、フリースタイルに力を入れる
グレコローマンで出場した国体でも決勝の中村拓磨(岐阜・中津商)戦のラスト3秒で6-0から逆転フォール負けを喫する不覚。グレコローマンで2度の優勝があり、世界へも飛躍したが、納得できない内容で2016年を終えてしまった。
今年は関東高校選抜大会でしっかり勝って幸先いいスタート。昨年の「関東高校大会優勝→インターハイ優勝できず」の例があるだけに、気をゆるめずに練習を続け、昨年の二の舞は踏まずにフリースタイルで初の全国一に輝いた。
「今年は四冠(全国高校選抜大会、インターハイ、全国高校生グレコローマン選手権、国体)を目指します」と、明確な目標ができた。インターハイへ向けての課題はタックルの処理。「決勝ではこれがしっかりできず、ポイントを取られた。まずここの克服です。あと攻撃のバリエーションを増やしたい」と言う。
今回闘うことはなかったが、基山が世界カデット選手権で早くもメダルを手にしたことに、まったく平静というわけではない。しかし「自分はまだ体ができていない。もう少しパワーをつけてからです」と話し、焦らずに実力要請を目指す。
年齢の関係で4月のJOC杯はジュニアでの出場となり、大学選手の体力を感じることになりそうだが、「プレッシャーがないので、思い切りいきます」と気合をいれた。