※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) チームの勝敗を分けたシーンに立ち上がって応援する横山秀和監督
「決勝は50kg級を勝ち、流れをつくるつもりでした」と横山秀和監督。先制していいムードはつくったが、逆転され、最後はテクニカルフォール負け。「相手のかけひきのうまさにやられた。(日体大柏の)全体的にぶれがなく、崩してチャンスをつくることができなかった」と振り返った。
準決勝を劇的な逆転勝ちでものにし、勢いはあったが、「決勝につなげられなかった。日体大柏の選手は、大舞台で闘える心の強さを含めてすべての面で上でした。さすがに1位になるだけのチームですね」と、その強さに脱帽したが、初日の3回戦での九州王者の玉名工(熊本)との一戦と、この日の準決勝の花咲徳栄戦との激戦で、「力を使い果たした面はあったかもしれませんね」とも話し、決勝進出を果たした選手をねぎらった。
花咲徳栄戦は、チームスコア3-2での84kg級の試合で、山田修太郎が昨年の高校三冠王者の石黒隼士相手に劣勢をしいられた。ここで負けていればチームスコアは3-3。花咲徳栄には120kg級に国体96kg級王者の吉田ケイワンが控えているので、秋田商の勝利はなくなる可能性が高かった。
しかし、山田が0-4の劣勢から山田が小内刈りを決めてテークダウンを奪い、ニアフォールの体勢へ。ポイントを逆転し、30秒以上押さえ込んで終了のホイッスルを聞く殊勲の勝利。チームの勝利と決勝進出を決める劇的なドラマが展開された。
決勝の後、インターハイへ向けてミーティングする秋田商
チームの勝利のため、手の内を知られてもいいから、最後の逆転技として仕掛けたわけで、「チームのために闘ってくれ、勝利を導いてくれた功績に感謝したい」と話した。
インターハイでは日体大柏という明確な目標ができた。「負けた選手は失点が多かった。構えの安定感をつくって失点を抑え、攻撃できるように修正していきたい」と言う。日体大柏は週末を使って関東の強豪大学へ出げいこに行って鍛えている。
秋田商はそうした強化はできないが、学生王者を経てオリンピック予選にも出た門間順輝、全日本学生王者だった織山昭仁、日体大を卒業したばかりの櫻庭正義ら実績のあるOBが近辺に住んでおり、「平日でも来てくれて、胸を貸してくれます。OBが協力してくれるのが秋田商の伝統です」と、OBが一丸となって強化に励む利点を挙げた。
「インターハイまでには間に合わせたい」。2006年のこの大会で優勝し、2006・07年のインターハイでも勝っている秋田商。全国一奪還の闘いが始まった。