※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子)ハンガリー・グランプリで世界ランク5位の文田健一郎(日体大)が優勝するなどの結果に、笹本睦コーチ(日本協会アシスタントコーチ)は「確かな手応えを感じた遠征になった」と総括。「文田は研究されていたので内容はよくなかったが、それでも優勝した。今後、近々ではアジア選手権があるので、自分の動きにつなげられるような対策をしてくべきだという課題も見つかりました。守りに徹している相手であっても、チャンスがあって相手をつかむことができれば、100%そり投げに持っていけた」と評価した。
文田本人も「『あれ? 僕、知られてるな、研究されてるな』というのは、ハンガリー入りして合宿の最初に、当たる選手当たる選手が組んでこないことで、気がづきました。うれしかったですね。今までは太田忍先輩(ALSOK)のおまけで行っていたので、外国の選手は僕のことを『2番手の日本人』としか認識してなかったんです。それが、今回は『フミタ』と認識された」と顔をほころばせた。
一方、研究される側になったことで課題も見えた。「圧倒しなければならない相手にぎりぎりの試合をしてしまった。今までは相手がばててくれれば反り投げのチャンスがあったけど、ルールが変わればそれも通用しなくなるかもしれない。これから必殺技のレパートリーを増やしたいと思う。また、海外で勝つよりも国内で厳しい闘いがあるので、太田先輩に勝ち切ることを目標に、明治杯(全日本選抜選手権)に照準を合わせています」と話した。
笹本コーチは「泉武志(71kg級=一宮グループ)と塩川貫太(85kg級=日体大)は、外国チームからも『いい選手だな』と声をかけられた。試合で勝てなかった塩川も、練習ではよかった。これから経験が増えれば必ず伸びると思う。重量級もよかったと思う。テクニカルフォールで負けることがなかった。今までの成果が出て来ていると思う。あと3年しかないとも言えるが、方向は間違っていないと確信して、さらに強化していきたい」と話した。
クロアチアのザグレブ・オープンで銀メダル、ハンガリー・グランプリで銅メダルと続けてメダルを獲得した泉は「周りに何もなく、レスリングのことだけを考えることができました。本当にいい練習ができました。ここまでレスリングに向き合い、毎日、どうしたらステップアップできるかを考えて練習に取り組めたのは、レスリング人生で初めてでした」と遠征を振り返った。
2015年の世界選手権(米国)は初戦敗退だった。「あの悔しさを2度と味わいたくないという気持ちでやりました。日ごとによくなっていくのが自分でも分かりました。2大会連続でメダルを取れて自信もつきました。アジア選手権はもちろん、そのあとは明治杯で勝って、世界選手権でリベンジしたいと思っています」と、一皮むけたようだった。