※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
昨年のリオデジャネイロ・オリンピックで4つの金メダルを獲得した日本女子レスリング。そのレベルの高さは国民的に知れ渡っている。シニアの活躍に続けとばかりに、高体連レスリング専門部も女子参入を着実に進めてきた。
2012年に関東高校女子大会が初開催され、2014年長崎インターハイでは公開競技として女子が始まった。今年8月の山形インターハイでは女子が正式種目に採用されることが決まっている。この流れにより、関東高校選抜大会でも初めて女子が行われ、関東一円の高校から34選手がエントリーした。
第1回関東高校女子選抜大会でメダルを獲得した選手たち
関東選抜大会は3月の全国高校選抜大会の予選になっている。真冬の寒い時期に全国のブロック大会で全国をかけた熱い闘いが繰り広げられている。
枝迫理事長は「インターハイに女子を作るため、関東女子大会を作って実績を積んだ。残るは3月の全国高校選抜に女子を入れること。実現できるよう準備していきたい」と話し、今大会の女子の部をいずれは3月の全国高校選抜大会の予選につなげていくプランを明かした。
課題もいくつかある。「全国高校選抜大会は3月下旬で、4月上旬には小学生からジュニアまでの女子選手が一同に集うジュニアクイーンズカップがあります。4月下旬にはJOC杯と、わずか1ヶ月に全国大会が3つになってしまうのです」。減量競技のため、過密日程の問題をクリアしなければならない。
現在はジュニアクイーンズカップとJOC杯の成績を参考に世界ジュニア&カデット選手権の代表を決めている。全国高校選抜大会に女子ができたら、その優勝者をどのように扱うのかという問題も。さらに、全国高校選抜大会はインターハイとほぼ同じ試合数を、インターハイより1日少ない3日間で行っている。女子が入る場合のスケジュール調整には時間がかかりそうだ。
■大会が増えることでモチベーションが違ってくるが、課題も出てくる
今大会自体は無事成功に終わった。元女子選手で現在は東洋大付属牛久高(茨城)で男女の部員を抱える古里愛里監督は「男女一緒に大会が行われることは、指導する側もやりやすい」と話す。男女がともに練習する環境で、試合が別日程だと練習内容にばらつきが出てしまうからだ。
また、「女子は、各チームに1、2人くらいなので、マネジャーのように扱われることがあるんです。私も学生時代、リーグ戦の時は裏方の仕事に徹していました。自分の出番がある大会が増えれば、裏方の仕事を割り振られていてもモチベーションが違うと思います」と女子大会が増えたことを歓迎した。
その一方で、女子は高校生からシニアで活躍する選手が多い。女子56kg級の南條早映(東京・安部学院2)は1月下旬に「ヤリギン国際大会」(ロシア)で優勝を飾り、帰国早々に再びマットに立った。2週間後には「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)にも出場予定で、連戦の疲れが心配される一面もある。
女子の普及に長く携わっている東京・安部学院高の成富利弘監督も、独立した女子大会から男子と同時開催という流れを「とても良いこと。やっとここまで来られた」と喜ぶ一方で、「普及と強化のバランスはまだまだ難しい面がある」とも話した。
「大きな課題がありますが、なんとか実現させたい」と枝迫理事長。インターハイの正式採用を追い風に、全国高校選抜大会での女子実施を目指す。