※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 今年こそ全国王者を目指す安楽龍馬(山梨・韮崎工)
昨年は安楽にとって全国の壁を思い知る1年だった。昨年のこの大会では学校対抗戦で日体大柏を破って初優勝。個人戦でも2位に入って全国高校選抜に臨んだが、初戦敗退。その後、6月の関東高校大会で初優勝を飾ってインターハイ制覇へはずみをつけたが、3位に終わった。
韮崎工はグレコローマンに力を入れている高校で知られている。県立高校にも関わらず、早いうちからグレコローマンを専門的に学びたい選手が全国からやってくる。安楽もその一人で、グレコローマンには自信があった。秋の岩手国体はグレコローマンにエントリーし、全国初制覇を狙ったが、決勝戦で中村拓磨(岐阜・中津商)に敗れて2位。一度も全国タイトルが獲れないまま、シーズンが終わった。
「高校まではフリースタイル、グレコローマンと両方強くなる」と目標を掲げていた安楽は、「関東止まりだな、とみんなに言われます」と唇をかみしめた。特に国体は決勝で6点を取ってリードしていたのに、残り3秒で逆転のフォール負け。思い出すたびに悔しさがこみ上げる。
決勝で闘う安楽(赤)
全国王者への課題は自覚している。「体重が69kgしかありません。減量ではなく調整レベル。パワーが足りていない。昨年も梅林(太朗=東京・帝京)先輩と対戦して、痛感しました。もう一つの課題は、タックルの処理です」。毎日、この2点に重点を置いて練習をしている。
この冬は関東高校選抜と全国高校選抜の双方の制覇を視野にフリースタイルに時間を割いて仕上げてきた。その結果が出て「うれしい」と笑顔を見せたが、全国のライバルたちを思い出すと、「このレベルでは全然ダメ。3月の全国選抜で優勝して、ライバルたちと同じレベルに立ちたいです」と厳しい顔に戻った。
昨年12月の全日本選手権では、同校OBの文田健一郎(現日体大)が、リオデジャネイロ・オリンピック銀メダリストの太田忍(ALSOK)を破って優勝した。「僕の憧れの先輩。太田さんに勝った時は感動しました。タックルは米満(達弘)先輩のように、グレコローマンは文田先輩のようになれるように頑張りたい。目指すは高校三冠王です」と今シーズンの目標を掲げた。