※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2013年W杯でイランを訪れているジョーダン・バローズ。4年ぶりにイランへ赴けるか(写真は2015年世界選手権=撮影・矢吹建夫)
米国レスリング協会のリッチ・ベンダー専務理事は、USAレスリング協会ホームページのほか、「USA Today」紙などのメディアに対し、「ケルマンサに行くことは米国レスリング・チームの総意である。米国協会は、イランから選手の入国申請に対して特別な注意が払われる保証を得ている。レスリングは政府の方針や政治を超越してきた長い歴史がある。それはスポーツとオリンピック・ムーブメントの美しさであり、政治ではなくアスリートの闘いだ」などとコメントしている。
米国のメンバーには、2012年ロンドン・オリンピックを含めて4度世界一に輝いている74kg級のジョーダン・バローズも含まれている。
米国とイランは1980年に国交が断絶され、現在も核兵器などをめぐって政治的に対立しているが、1995年に米国・チャタヌーガで行われた男子フリースタイルのワールドカップには、国交断絶後、あらゆるスポーツを通じて初めてイランのアスリートが入国。1998年にイランで行われた「タクティ・カップ」には、1992年バルセロナ・オリンピック金メダリストのケビン・ジャクソンら米国選手が出場するなど、レスリングは断絶緩和に大きな役割を果たしてきた。
2013年にレスリングがオリンピック競技からの除外の危機を迎えた時、両国は再び険悪な関係になっていたが、ニューヨークの国連本部前でロシアを含めた対抗戦を実施するなど、レスリングには政治を超えて平和に貢献できる力があることをアピールした。