※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
園田新(拓大)
現状を打破すべき選手は、全日本選手権で3連覇を果たした園田新(拓大)。4月からはALSOK入社が内定している。“オリンピック選手&同金メダル量産工場”のALSOKは、全日本王者を輩出するために選手を採用しているわけではない。園田は、それを指摘されると「分かっています」と表情を引き締めた。
■東京オリンピックに出るため、リオの予選全大会に参加した
園田は、リオデジャネイロ・オリンピックへ向けても国内の第一人者の地位を獲得し、前年の世界選手権を含めて4度の予選すべてに出場した。しかし、最終予選でアルゼンチンの選手相手に1勝しただけにとどまり、同オリンピックへ出場するまでの実力養成には時間が足りなかった。
リオデジャネイロ・オリンピック最終予選、死力を尽くした闘いも実らなかった=撮影・増渕由気子
最終予選のハンガリー選手(世界2位を何度も経験している選手)との試合では、4分30秒まで1-1のラストポイントで勝っていたが、バッティングで反則を取られ、これが原因で敗れた。スタンド戦では互角以上だっただけに、痛恨のバッティング。「情けなかった。あの悔しさが東京オリンピックへ向けてのばねです」と振り返る。
多少の落ち込みはあったと思われるが、当時の西口茂樹・男子グレコローマン強化委員長(現強化副本部長)から「こんなところで諦めちゃだめだ。東京オリンピックへ出るために、予選4大会とも経験したんだ」と言われ、気持ちはすぐに4年後に向いたという。
■強豪を求めて海外への単独での武者修行もあるか?
「東京オリンピックに出るのは自分しかいないと思っています」。国内大会の試合結果と内容を見れば、その言葉に異論をはさむ人間はいまい。だが、アジア、そして世界の予選を勝ち抜くためには、その“一人勝ち”状態がマイナスとなってしまう。国内の練習で競り合うことができないからだ、
全日本合宿で練習する園田
そう考えると、必要と思われるのが海外での修行だ。「技術を学び、持ち帰って反復練習する」では、練習相手がいない。ある程度の期間、数多くの強豪がいる国で練習することが必要と思われる。
松本慎吾・強化委員長(日体大教)は、重量級の強化の一環として単独での長期間の海外修行を口にした。園田は「単独というのは、頼る選手もいなくて不安も多いでしょうが、そういうものを乗り越えて強くなれると思います。強くなるため、行きたい気持ちはあります」と前向きに受け止めている。
所属するALSOKの方針や遠征先の練習環境、長期遠征にかかる費用などの問題があるが、国内での練習だけでは足りないレベルにいることは確かなので、実現が望まれる。園田は「前に行ったハンガリーには多くの強豪選手がいて、練習環境もいい。ドイツ遠征もよかった。ロシアやイランも条件さえ合えば」と話し、強豪を求める気持ちは強い。
松本慎吾・強化委員長の指導の下、グレコローマン重量級(96kg級)でオリンピック出場を果たした斎川哲克コーチと練習する園田(背中)
■この冬は新ルール下での世界での立ち位置を知る
この冬は2月初めに学生選抜の遠征で「デーブ・シュルツ国際大会」(米国)を経験し、3月には全日本チームのクロアチア~ハンガリー遠征に参加し、合宿と2度の国際大会出場が予定されている。オリンピック予選のあと国際大会がなく、しかもパーテールポジションの選択のないルールに変わったので、新たに世界における自分の立ち位置を知り、今後の強化に指針にしたいという。
5月にはアジア選手権(インド)がある。「前回(2015年)が5位。その時よりは絶対に強くなっていると思うので、3位が目標」。現実を知っているだけに大言壮語はしない。東京オリンピックを目指した闘いは、一歩一歩着実に進めていく。
「新」という名前は、「新しいものにチャレンジしていこう」との期待を込めてつけられた名前だという。「これまでの4年間もそうですが、今度の4年間もいろんなことにチャレンジしていきたい。チャレンジによって自分に必要なことが分かる」。いい練習環境の下、「自覚をもって、死ぬ気で頑張ります」と気合を入れた。