※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
松本慎吾強化委員長(左端)のもと、男子グレコローマンも始動。重量級対策としてロンドン・オリンピック96kg級代表の斎川哲克コーチも参加
男子グレコローマンの松本慎吾強化委員長(日体大教)は、2020年東京オリンピックでの全階級出場と、金メダルを含めたメダル複数個の獲得を宣言。今回の合宿のテーマを「体づくり」とし、世界レベルの体力養成を目指す。昨秋に始まった新体制下では、これまで以上に体力測定を定期的・継続的にやっていく方針で、体力を数値で表すことでモチベーションを高めていくという。
体力測定の数値がすべてではないが、「世界で闘える体力レベルでないと、勝負にならない」と言う。特に重量級選手の体力は世界レベルに比べて劣っているそうで、重量級(84kg級)で闘っていた同委員長としては悔しさもある。130kg級でオリンピック3連覇しているミハイイン・ロペス(キューバ)は、パワーだけではなく、「しっかり走れる体力も持っている」とのことで、全般的な体力の必要性を訴えた。
重量級対策として、選手を単独で外国へ修行に行かせることも考えている。「数人で行くと甘える部分が出てくる。一人で行くことで自主性と度胸がつく」との理由からで、4月から社会人になって学業に縛られない130kg級の園田新(拓大)ら期待の選手が3ヶ月、半年と外国で練習することもあるかもしれない。
この冬の全日本チームは、1月と2月は国内でじっくり鍛え、3月にクロアチア~ハンガリーで合宿と国際大会出場を予定している。一方、リオデジャネイロ・オリンピック銀メダルの太田忍(ALSOK)を含めた軽量級の3選手を2月中旬にキューバに派遣することも決まっている。
太田がオリンピックの決勝で破れた相手はキューバのイスマエル・ボレロ・モリーナであり、キューバは計2階級で優勝している。ロシアと並ぶグレコローマン大国に挑むことになったわけで、日本チームとしては16年ぶりのキューバ遠征。重量級の単独武者修行とともに、これまでとは違った試みを数多く取り入れる姿勢を示した。「東京オリンピックまでの3度の世界選手権で金メダルを取れなければ、オリンピックでの金メダルはないと思っている」と、毎年が勝負であることを強調した。
男子フリースタイルを指導する新任の前田翔吾コーチ(クリナップ)
練習はフリースタイルとグレコローマンに分かれて技術練習やスパーリングを行ったあと、最後の補強トレーニングは「両スタイル選手の闘い」といった形で実施。四つ組みの投げ合いはグレコローマンの選手が有利に思えるが、フリースタイルの選手も「負けてたまるか」という闘志がありあり。
相撲の闘いでは、敗れたグレコローマン・チームが腕立て伏せ100回の“罰”を受けるなど、ゲーム性を取り入れてライバル意識を刺激。“苦しいだけの練習”にならない工夫があって、これまでとはひと味違ったトレーニング・シーンが展開された。
合宿は18日まで行われる。
■リオデジャネイロ・オリンピック59kg級銀メダル・太田忍の話「まだ詳しいことは聞いていないが、キューバ遠征は楽しみだ。(2回負けているウズベキスタンの)タスムラドフは、オリンピックの時に『階級を上げる』と話していた。いま、勝てない選手はキューバ(イスマエル・ボレロ・モリーナ)だけ。腕取りが強い選手なので、どうやれば自分がいい組み手にもっていけるかを研究してきたい。(文田健一郎の存在は)常に強い相手を意識できるのはいいことだと思う。やればやっただけ強くなれると信じている」
■全日本選手権59kg級優勝・文田健一郎の話「(全日本王者に輝いたが)去年のことは去年で終わり。新年からは新たな気持ちで練習できている。キューバに行くことになったのは、正直言って驚いた。オリンピック・チャンピオンのいる国。強さを少しでも分かって帰って来られればいいと思う。こうした機会を積み重ねていけば強くなれるはず。(太田忍は)練習を挑めば相手をしてくれる。目指すところは一緒。でも(オリンピックの)枠はひとつなので、自分が取れるようにしたい」
![]() 6面マットで両スタイルの選手による熱気あふれる練習が展開された |
![]() グレコローマン軽量級は体が十分に動くコーチが勢ぞろい。手前は文田を投げた笹本睦、その向こうが松本隆太郎、左端が長谷川恒平。 |
![]() 文田健一郎は四つ組みの投げ合いで樋口黎に圧勝続き! |
![]() 練習の最後に相撲でフリースタイルとグレコローマンが対決 |
![]() 相撲で負けたグレコローマンは腕立て伏せ100回! |
![]() ゲーム性のない厳しいだけのトレーニングも実行 |