※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫) 6年連続優勝を達成した高谷惣亮(ALSOK)
高谷は「今回は試合も練習も楽しくやった」と振り返る。「やっぱり、守って勝つのは僕らしくない。攻めてナンボでしょう。僕の最終地点はタックル。そこは譲れない」
優勝を決めた直後は“お約束”のパフォーマンスも。優勝したらやろうと決めていたそうで、ドラマ『逃げ恥』で話題となった恋ダンスを披露した。試合も余興も緩急自在だ。
8歳年下の山崎のガツガツしたレスリングはいい刺激になったという。「弥十朗君はすごく突撃してきましたね。3、4回、バッコバコ頭が当たりましたよ。まあ、それを顔で受け止める僕もすごいと思いますけど(微笑)」
■“リオデジャネイロ・ショック”からの再起に時間がかかったが…
メダルが期待されたリオデジャネイロ・オリンピックは7位に終わった。すべてをかけていたので、高谷は「これからどんなふうに練習したらいいかわからなかった」と言うほどほどショックを受けた。引退するつもりはなかったが、迷いや葛藤との闘いが続いた。
4年前のロンドン・オリンピックが終わった時には、初戦敗退だったにもかかわらず、すぐ気持ちを切り換え、リオデジャネイロに向けて頑張ることができた。その時に比べると大違いだ。
高谷は年齢のことを気にしていた。「もう27歳。東京オリンピックの時には31歳になっていますからね」。どんなふうに目標設定をして、東京を目指せばいいのか。その模索の一貫として、今大会は階級を上げて86㎏級にエントリーするプランもあったが、拓大の恩師である西口茂樹部長の一言で思い止まった。
「もう一度、74㎏級で世界を目指そう!」。西口部長に信頼を寄せている高谷の腹は決まった。「先生がそう言うなら間違いない。あの人が一緒に闘ってくれるなら心強い」
決勝で新進気鋭の若手選手を寄せつけずに勝った高谷
■新年は1月下旬の「ヤリギン国際大会」で始動
気持ちの持ち方に変化があったのだろう。これまで大会前日になると熟睡できないタイプだったが、今回はよく眠ることができたと話す。試合が始まってもリラックスしたムードは変わらず。もう一方のブロックの準決勝の山崎-奥井眞生(国士舘大)は余裕をもって観戦できた。
「ここ8年くらい国内では僕を脅かす存在が現れていない。弥十朗君にしろ、奥井君にしろ、後輩の浅井(翼)にしろ、そういう存在になってほしい」
東京オリンピックに向け、高谷は日本全体でメダルを獲りにいこうと決起を促す。「所属に関係なく、切磋琢磨していけたらいい。早稲田レスリング部の専任コーチである太田拓弥さんも全日本チームのコーチに入った。決勝では弥十朗君のセコンドに就いていたけど、日本として闘っていく時には利用させてもらいます。太田先生も僕にどんどん言ってほしい」
3度目のオリンピックに向け、高谷は年明け早々の1月下旬にロシアで行われる同国最高レベルの国際大会と言われる「ヤリギン国際大会」に出場し、世界への再挑戦をスタートさせる。