※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫) グレコローマンでも強さを見せた松本篤史(ALSOK)
日体大時代から国内のトップレベルで活躍し、2012年のロンドン・オリンピック、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックを目指したが、ともにかなわなかった。特にリオデジャネイロ大会は、国際大会でも優勝を経験し、出場が大いに期待されながらの無念だった。昨年12月の全日本選手権でまさかの初戦敗退。オリンピックへの夢はあっけなくしぼんだ。
「国内選考会で情けない試合をして日本代表になれなかった。終わったと思った。次の仕事を考えないといけないと思った」。失意の中、今年はひとまずは学生相手にコーチ見習いをして過ごした。時間がたつにつれて悔しさが沸き、現役続行を決意。5月の全日本選抜選手権ではフリースタイル86kg級で優勝したが、ロンドン大会・男子グレコローマン60kg級銅メメダリストの兄・隆太郎の助言もあってグレコローマンへの転向を決意した。
■父親が頑張る姿を子供に見せる!
スタイルは変えたが、強さは変わらなかった。「フリースタイルの時もグレコローマンでも、プレースタイルは変わらない。前に出て相手が嫌がることを6分間やり続けること」。今大会でも実力者の角雅人(自衛隊)、岡嶋勇也(警視庁警察学校)らに押し負けず、言葉通り終盤に強さを発揮して優勝を手にした。
決勝で闘う松本
一度は終わったと思ったレスリング人生だったが、今年12月にALSOKとの契約が終わったあとは、警視庁に進むことが決まっており、警察学校を経て、再びオリンピックを目指すための環境を手に入れた。
妻からは「父親が頑張っている姿を息子に見せてほしい」と励まされた。オリンピックでメダルを獲得した兄の存在も、「このままでは終われない」という気持ちを後押ししている。28歳の松本が新たなステージで3度目の正直を目指す。