2016.12.26

【2016年全日本選手権・特集】恵まれた素質がやっと開花! 17歳で全日本女王へ…女子55kg級・南條早映(JWA/東京・安部学院高)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

 同門のライバルより1日早く“17歳の全日本チャンピオン”に。全日本選手権の女子55kg級は、JOCエリートアカデミー所属の南條早映(東京・安部学院高)が決勝で全日本選抜選手権2位の角谷萌々果(至学館大)を5-2で下して優勝した。

 優勝の瞬間、南條が一目散に向かった先はセコンドの吉村祥子コーチだった。顔をくしゃくしゃにして飛びつき、恩師と優勝を分かち合った。17歳の優勝は5年ぶりの快挙だった。

 南條は中学5冠(全国中学生選手権2度、全国中学選抜選手権3度)の実績を持ち、高校に入ってからもインターハイやアジア・カデットで優勝するなど、国内外で優秀な成績を収めている。叔父は今夏、オリンピックで大活躍の女子柔道を率いた南條充寿・前監督と、一族そろって格闘技にいそしみ、才能は折り紙つきだ。

 だが、同門の同級生で、今年5月に17歳で全日本選抜選手権を制した須崎優衣の存在に隠れがちだった。南條は「同級生として比べられることも多いけれど、須崎選手の方がたくさん練習している」と、須崎のすごさを認めているものの、悔しい思いを何度も経験している。

 8月、2020年の有望選手を集めたターゲット選手の数人が強化の一環でリオデジャネイロへ向かった。エリートアカデミーからは須崎や53kg級で卒業生の向田真優(至学館大)、75kg級の古市雅子(日大)ら3名が選ばれたが、南條の名前はなかった。「選ばれたいという気持ちはありましたが、名前がなくて悔しかった」-。

■「オリンピック選手が出ていないので、満足し切ってはいけないと思う」

 10月の岩手国体では初めて女子が採用された。53kg級のみの開催ということもあり、48kg級、53kg級、55kg級の3階級から45選手が一堂に集まった熾烈なトーナメントとなった。南條と須崎はともにエントリーし、須崎が優勝。一方、南條は準々決勝で敗れて表彰台に乗れなかった。

須崎と同階級に出場したことで、同じ土俵ではっきりと差が見えてしまった。「国体は悔しかったです。でも、悔しいくせに、それをばねに練習することがあまりできない。自分は自分に甘いんです」。

 悔しさを力に変えられない毎日を送っていた2週間前、ついに吉村コーチから雷が落ちた。「かなり厳しいことを言われたが、心当たりがあることばかりだった。絶対にここで変わろうと思った」と一念発起。この2週間、「絶対に優勝」を掲げて最後までポイントを獲りに行く姿勢で取り組んだ結果が、ついに実った。

 吉村コーチからは「自分でやることをやり切ったら、抱きつきに来い」と言われていて、その公約を果たすことができた。一つ殻を破れた南條だったが、優勝会見ではあまり笑顔を見せなかった。「うれしい気持ちありますが、オリンピック選手が出ていないので、満足し切ってはいけないと思う」と気を引き締めたまま。

 けれども「今回の優勝で、(須崎に)少し追いつけたかなと思います」とも話した。須崎も翌日に圧倒的な強さで全日本初制覇。そろって全日本チャンピオンになった。来年は2人そろって世界デビューを果たせるか。