※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫) 高橋昭五(日体大)
リオデジャネイロ・オリンピックのあと、世界レスリング連盟(UWW)はシニアの男子グレコローマンのルール変更を発表した。一番大きな変更点は、パッシブに対するパーテールポジションの選択が廃止され、試合を中断することがなくなったことだ。
その結果、大会初日のグレコローマンの試合は、各階級とも技をかけてのポイントではなく、パッシブによるポイントが目立った。髙橋はルールを味方につけていないことを悔いた。「しっかりと自分の形でポイントまでつなげることを課題にしたい」。
この優勝には、ドラマもあった。決勝を争った川瀬克祥(岩手県体協)は今年10月の岩手国体で辛酸をなめさせられた相手だった。「なんとしてでもリベンジしてやろうという気持ちでマットに上がりました」。
川瀬は大学の先輩で、練習する機会も多く、お互いに手の内はわかっている。だからこそ膠着状態の多い試合展開になったとも考えられる。前述通り、パッシブでポイントを奪い合う攻防の末、2-1の僅差でリベンジを果たした。
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しかし、一難去ってまた一難。国体の約半月後にあった全日本大学グレコローマン選手権では早々に姿を消す失態を演じてしまった。「大学代表として出場させてもらったにもかかわらず負けてしまい、(今大会に向けても当初は)モチベーションも上がらなかった」と振り返る。
国体王者との決勝で接戦を勝ち抜いた高橋
高校時代の恩師の井上智裕(三恵海運)がリオデジャネイロ・オリンピックで活躍した姿は大きな刺激になっていた。「先生がリオに出場していい試合を見せてくれたので、東京オリンピックでは自分が活躍したい」という気持ちが根底にあったからこそ、立て直すことができた。
髙橋は、「グレコローマンは全階級、日体大が強い」と胸を張る。その中でも66kg級は激戦階級。「今回はたまたま自分が優勝しただけ。他の入賞した選手、だれもが優勝する実力はある。日体大の(現役・OBの)誰が優勝するかわからない」と言い切る。
そんな中、来春に日体大を卒業するが、髙橋の目標は定まっている。「社会人としてしっかり練習して、世界選手権の代表に選ばれてメダルを獲りたい」-。