※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 徳山大戦の最終試合は57kg級の吉田が逆転勝ちし、チームの勝利を決めた
■予選B組の1位決定戦で中京学院大の真骨頂が出た
福岡大は4年生に菅原翔太と花山尚生のダブルエースがいて優勢と見られていたが、中京学院大は、馬渕賢司監督は「うちは秋に強いから」という言葉どおり、きっちりと仕上げてきた。
中京学院大が際立ったのは、Bグループ1位を決めた時だ。2戦全勝同士の対決となった徳山大との一戦。チームスコア3-3で7番手の57kg級に勝負がゆだねられた。中京学院大は4年の吉田浩大主将が登場。吉田は序盤から大量失点し、あわやテクニカルフォール負けの大ピンチ。そこから少しずつ点数を返すも苦しい状況が続いていた。
試合も終盤になり、徳山大ベンチからは勝利を確信する声が出始めた時だった。吉田が組みついて鮮やかな腰投げなどを決め、土壇場で12-12へ。徳山大サイドのチャレンジの失敗もあって、13-12となり終了のブザーが鳴った。
1年の山本に対し馬渕監督は「よくやった」と褒めた
リオデジャネイロ・オリンピックで4連覇を逃した吉田沙保里選手が、決勝の終盤に1-4とリードされた時、テレビ解説の「2点じゃだめですよ」というコメントは印象的だった。日本人はタックルを軸に攻める選手は多いが、馬渕監督は「時間がない時はタックルに行っても逆転できない。無理してでも大技に行かないと」と指導しているそうだ。まさに練習の効果が出た一戦だった。
■2位に終わったが、大量リードを奪われてもあきらめない粘りがあった
グループ優勝の殊勲となった吉田だったが、体力を使い果たしてしまったのか、福岡大との優勝決定戦では1番手で登場したが振るわず0-6で敗退。4番手で1年の山本隼平が勝ち星を2-2のタイに持ちこむが、5番手の125kg級の藤田悠矢も終盤までリードしながら逆転負け。
福岡大の主力を倒した二宮
最終戦となった86kg級に登場した廣瀬章吾がテクニカルフォールで敗れ、チームスコア3-4で優勝を逃してしまった。
「悔しい…。57kg級と125kg級がね…。本当に今回は悔しい。応援に来てくれる方が多くて、盛り上がっていたので勝ちたかった」と、3季連続2位に馬渕監督の表情は悔しさがにじみ出ていた。けれども、大量リードを奪われてもあきらめない粘りをチーム全体でも見せたことは成長した証。福岡大の花山主将に「やはり中京学院大は強かった」と言わしめた。
3度目の正直とならなかったが、「次こそ優勝する」と決意を新たにした馬渕監督。今年8月までナショナルチームのコーチとしても多忙な生活を送ったが、それでも所属選手の指導もしっかり行い、結果を出してきた。
来年こそ―。2017年の春、4度目の正直で馬渕監督が宙を舞えるか。