※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治) 有元伸悟(近大職)
そう語るのは、非オリンピック階級・世界選手権(12月10~11日、ハンガリー・ブダペスト)の男子フリースタイル61㎏級代表の有元伸悟(近大職員)。今年は2月にブルガリアで開催されたぺトコ・シラコフ&イワン・イリエフ国際大会で3位に入賞し、5月の全日本選抜選手権で優勝と成長ぶりを見せつけている。
■昨年のゴールデンGP決勝大会は何もできずに完敗! しかし貴重な経験
舞台が大きければ大きいほどハッスルするタイプ。選手としての自覚が芽生えたのは、近大1年の時(2012年)に全日本選手権で3位に入賞した時だった。「その瞬間はうれしさでいっぱいだったけど、その一方で『もう、自分は簡単に負けちゃダメ』という意識が芽生えました。そういうふうに意識していると、生半可な気持ちにならない。周囲の期待が大きいということは幸せな悩みかもしれない」 全日本選抜選手権で優勝、世界キップを手にした=撮影・矢吹建夫
国際大会には苦い思い出がある。昨年11月のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)では、リオデジャネイロ・オリンピックに階級をダウンして出場し銅メダルを獲得することになるハジ・アリエフ(アゼルバイジャン)に、何もできずに完敗を喫した。
ただ、有元は「何もできなかったことも経験になっている」と振り返る。「やっぱり、のみ込まれていたんですかね。もう二度と同じ過ちは犯したくない。世界選手権では積極的に自分から攻めていきたい」 2006年、1年生で全国中学生選手権を制した有元
■後輩・樋口黎(日体大)の活躍に刺激を受ける
最近ではリオデジャネイロ・オリンピックのフリースタイル57㎏級で銀メダルを獲得した大阪・吹田市民教室時代の2年後輩の樋口黎(日体大)から影響を受けた。「樋口とは一緒に練習していた。オリンピックは意識して観ていました。臆することなく闘ったことが、彼の銀メダルの要因のひとつなのかな、と。正直、悔しい思いもあるけど、自分ももっと自信を持ってレスリングができればな、と思いますね」と言う。
今年3月、近大を卒業、現在は同大職員として練習中心の生活を続ける。環境は? 「周囲に強いパートナーがいるという環境ではないけど、その分、練習の自由度は高い。自分で工夫して好きな練習に打ち込める。今は量より質に重点を置いてやっています。そのスタンスで全日本選抜選手権も優勝することができたので、自分のやり方は間違っていないと自負しています。今回の世界選手権でも、同じスタンスで結果を残したい」ときっぱり。
全日本合宿で練習する有元(下)
「(関東の選手は)スパーリングをする時でも簡単に点をやらず、グラウンドになっても執拗に攻めてくる。取り組む姿勢はほとんど試合に近い。こういう場に来る度に、僕は何かを吸収して大阪に持って帰って磨く。それを東京に持ってきて試してみる。その繰り返しです」
趣味はオフの飲み歩き。世界選手権で結果を残して、プライベートでもウマが合うフリースタイル70㎏級代表の多胡島伸佳(早大)とともに、勝利の美酒に酔いしれることができるか。
有元伸悟(ありもと・しんご=近大職)
1993年8月30日生まれ、22歳。大阪府出身。大阪・吹田市民教室~大阪・興國高~近大卒。全国少年少女選手権2度優勝。2006・08年に全国中学生選手権を制する。2012~15年西日本学生選手権で大会史上16人目の4連覇を達成。2015年は西日本の選手としては32年ぶりとなる学生二冠(全日本学生選手権、全日本大学選手権)を制覇。全日本選手権は2位。2016年はぺトコ・シラコフ&イワン・イリエフ国際大会(ブルガリア)3位のあと、全日本選抜選手権で優勝。165cm。 |