2016.11.25

3スタイルの全日本合宿がスタート…新強化体制が始動

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 3スタイルの全日本チーム合同の合宿が11月24日、東京・味の素トレーニングセンターでスタート。2020年東京オリンピックへ向けて選手とコーチを兼任する吉田沙保里(至学館大職)がコーチ・デビューを果たした。練習は報道陣に公開され、30を超える社から約70人の記者・カメラマンが集まった。

 リオデジャネイロ・オリンピック後に強化スタッフの一部が交代。男子グレコローマンと女子はそれぞれ1回ずつ全日本合宿をやったが、3スタイル合同は初。ゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)へ遠征しているコーチを除き、3スタイルのほぼ全コーチが集まった。いわば新体制の“出陣式”。

 栄和人強化本部長は「一人ひとりがオリンピックの金メダルを目指し、高い目標に向かって頑張ることが東京オリンピックでの勝利につながる。各自で意識を高めてほしい」とあいさつ。リオデジャネイロ・オリンピックの男子は世界大会に初出場した2選手がメダルを取ったが、「そうあることではない。来年、さ来年の世界選手権で結果を出してほしい」と要望した。

 このあと、全コーチが選手に対して東京オリンピックへ向けての熱き思いを伝えた。続いて来月10日(土)~11日(日)にハンガリー・ブダペストで行われる非オリンピック階級の世界選手権の日本代表が紹介され、各選手が大会へ向けての決意表明したあと、練習が開始された。

■持っているもののすべてを伝え、自分を超える選手を育てる…吉田沙保里コーチ

 栄本部長は新体制のスタートを、「リオデジャネイロへ向けては、途中で(2013年12月)強化本部長に就任した。今回は最初から新体制でスタートすることになり、きのうあたりから緊張感に襲われた」と振り返り、コーチングスタッフについては「私をサポートしてくれるコーチと、(若くて)選手と肌を合わせて練習できるコーチをそろえ、万全の体制をつくった」と説明した。

 吉田沙保里の兼任コーチに関しては、「引退か現役続行か迷っていた、引退するとなると、吉田の持っているものを後輩に伝えることができなくなる。持っているすべての技術を伝えてほしいと思い、コーチ兼任という形で残した」と説明。吉田を超える選手を育てることが望みで、「自分が東京オリンピックに出たいから出し惜しみするようなことは、やっても意味がない」と話した。

 その吉田はコーチとして初の練習を終え、「複雑な感じです。がんがん行けばいいのか、教えることが必要なのか、など迷ってしまった」との第一声。ただ、これまでも自分の練習をやりつつ、後輩への技術指導もしていたので、大きな戸惑いではなかったようだ。

 練習前に行われたコーチ会議は、「何をするのか分からず、ペンも持っていかなかった」と苦笑いし、コーチとしての顔になるまでもう少し時間がかかりそう。女子選手には女性にしか相談できないこともあるので、その面でも「頼られるコーチになりたい」と言う。

 栄本部長の「すべてを伝えてほしい」という言葉には、「隠すつもりはない。自分の所属の選手でなくとも、技術を伝えたい。自分を超える選手を育てたい」と答えた。

 合宿は27日まで行われ、世界選手権の代表は12月6日に出発する。


 ◎世界選手権代表の声

 ■男子フリースタイル61kg級・有元伸悟(近大職)「リオデジャネイロでは、(吹田市民教室の)後輩の樋口黎がメダルを取り、刺激されている。日本軽量級の誇りをもって、樋口以上のメダルを取ってきます」

 ■男子グレコローマン71kg級・梅野貴裕(愛媛県協会)「リオデジャネイロでは、太田(忍)君と樋口(黎)君が初めてでの世界大会であるにもかかわらず銀メダルを取ってきました。ボクも今回が初めての世界大会です。2人に負けないよう、いい色のメダルを取りたいと思います」

 ■男子グレコローマン80kg級・阪部創(自衛隊)「自分持っている力を出し切って、メダルを獲得してきます。頑張ります」

 ■女子55kg級・向田真優(至学館大)「一戦、一戦に集中し、金メダルを持って帰ってこられるように頑張ります」」

 ■女子60kg級・坂野結衣(日大)「自分のレスリングを精いっぱい出し切って優勝できるよう頑張ります」

※男子フリースタイル70kg級の多胡島伸佳(早大)は授業のため不参加

ウォーミングアップの相手に吉田沙保里コーチを指名した樋口黎

6面マットをフルに使っての練習