※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 山梨学院大の優勝に貢献した70kg級の藤波勇飛(左)と74kg級の木下貴輪
金メダルを手に仲良く記念撮影に収まる2人。2年の藤波は「今年は学生の試合を全部勝つことができた」と話せば、3年の木下は「(決勝前に)大学の優勝が決まっていたので、気楽に行けた」と喜びの一声をあげた。
8月の全日本学生選手権(インカレ)は、ともに70kg級に出場して決勝で闘ったライバルでもある。結果は藤波が優勝し木下が2位。練習でも実戦でも切磋琢磨している2人は、大学対抗戦がある全日本大学選手権では、チーム優勝を目指して階級を分け、一枚岩になって優勝に貢献した。
■全日本選抜王者撃破で74kg級へのアップを決意…木下貴輪
74kg級の木下は、昨年は70kg級で学生二冠王者となり頭角を現した。今年5月の全日本選抜選手権では2位と好成績も残したが、70kg級は非オリンピック階級。74kg級に定着したい気持ちがあったが、「まだ体重が足りない」と体づくりに励んだ。
昨年の70kg級に続き、74kg級を制した木下
今大会で一番緊張したのは「準決勝の眞生(奥井=国士舘大)との一戦でした」と振り返る。準決勝に山梨学院大は3階級で出場したが、そこで全員が負けると、2位で追っていた拓大に追いつかれる可能性があったからだ。木下の緊張も2倍に膨らんだ。
ふたを開けてみると、木下が試合の主導権を握り、第2ピリオドでフォール勝ち。「できるところはしっかりと押さえられるようにしている」という練習での動きが試合でしっかり出せた形となった。フォールを狙いすぎると体力を奪われることがあるが、「藤波や乙黒(圭祐=65kg級)と毎日練習しているので、体力はついています」と苦笑した。
まだ74kg級としては小さいが、国体で浅井と接戦し、今回、全日本選抜選手権王者の奥井を破って優勝できたことで、「74kg級でやっていく覚悟が決まった。いいタイミングなので74kg級に正式に上げたい」と、全日本選手権は74kg級で出場したい希望を口にした。
インカレは2位だったので、今年は学生一冠。けれども、木下は「74kg級のチャンピオンの方がうれしいし、誇れる」と満足げに話した。
■激動の1年!「チャンスつかめなかったが経験になった」…藤波勇飛
初戦で宿敵を破った藤波は、その後も勝って優勝
今年は5月にリオデジャネイロ・オリンピック最終予選(トルコ)に出場し、ナショナルチームのメンバーとしても闘った激動の一年となった。「いろいろな経験をさせてもらった。(オリンピックの)チャンスはものにできなかったけど、経験を積んで成長できたと思う」と振り返った。
学生の試合は70kg級で出場することが多いが、シニアの公式戦では「今後も65kg級でやっていく予定」ときっぱり。1か月前の岩手国体では65kg級で初優勝を遂げ、準備は万端。「まだ、全日本選手権で優勝したことがないので優勝したい」と初優勝へ抱負を語った。
山梨学院大の中量級の双璧。大切な仲間だけど、時々ライバルとなる2人。来年は木下が最終学年で藤波は3年生に。切磋琢磨し藤波が65kg級で、木下が74kg級で全日本のトップを狙う。