2016.11.14

【全日本大学選手権・特集】優勝階級のみならず、全階級での奮戦で団体優勝…2連覇の山梨学院大

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=樋口郁夫)

 全日本大学選手権の大会初日に拓大と並んで1位だった山梨学院大が、最終日に2階級を制し、拓大に15点の大差をつけて2年連続で団体優勝を遂げた。

 この日は山梨学院大が“絶対”ともくろんでいた70kg級(藤波勇飛)のほか、74kg級(木下貴輪)が勝ち、65kg級の乙黒圭祐も5位入賞の順調だったのに対し、拓大は74kg級の優勝候補の浅井翼が初戦敗退で対抗得点のポイント「0」の不覚。午前の早い時間に演じられた番狂わせで、流れは山梨学院大へ大きく傾いた。

 高田裕司監督は「ラッキーでしたね。拓大がつまずいてくれて…。めったにあることじゃない。この大会の怖さです」と第一声。前夜、最終日の組み合わせを見た時、「きついな、と思った。藤波が取ったとしても、残り2階級は拓大にもっていかれることを覚悟していた」と言う。

 ふたを開けてみると拓大が自滅してくれた。74kg級の浅井が決勝に進んで木下を破れば、山梨学院大のポイントが3点下がり、拓大のポイントが12点増えるので、ともに55点。上位選手の数で優勝が決まる状況だった。

 また、日体大が初日の5階級で40点くらい取る可能性も予想。「その場合、(日体大の中量級はやや落ちるので)10点差くらいでつけていれば優勝圏内」という計算もしていたという。ところが、日体大も2階級で0ポイントに終わり、初日で実質的な白黒がついた。

 口には出さなかったが、“拓大と日体大の自滅で転がりこんできた優勝”といった気持ちを持っているようだ。

■2013・14年大会の連続2位が飛躍のエネルギー

 ただ、山梨学院大が7階級で対抗得点のポイントを取り(8位以内)、残る1階級も敗者復活戦に回った末に僅差で9位だった善戦だったことは評価している。「ほぼ全階級でポイントを取ったのはウチくらいじゃないかな。0点があると厳しい大会だから」と、チームが一丸となって上位を目指した団結力を称え、自チーム選手の踏ん張りも強調した。

 選手に対しては、「優勝しろ」と言うとプレッシャーがかかるので、「3位でいい。1回負けてもいいんだ」と伝え、リラックスを求めたという。だが、敗者復活戦に回るには相手が決勝に進む必要があるわけで、中堅選手に負けてはその道がない。8階級で3位を狙える選手がそろっているチーム力は「素晴らしい」と言うべきだろう。

 2年連続でフリースタイルの2大会を制し、来年以降も両大会制覇が目標となる。しかし、「リーグ戦はともかく、この大会はどうかな? 組み合わせの加減でどう変わるか分からないから、読めないよ」と、日体大、日大、拓大が達成している3連覇に対しては威勢のいい言葉が出てこなかった。さて本心は?

 このあと、12月には新人選手権などがあるが、藤波や木下らの強豪は全日本選手権(12月21~23日、東京・代々木競技場第2体育館)を目指すことになる。藤波は12月10~11日にハンガリーで行われる非オリンピック階級の世界選手権の代表候補にもリストアップされていたが、全日本選手権は65kg級での出場。減量もあり、世界選手権は辞退させたという。

 「国内の大会なら、74kg級でも86kg級でも勝ちますよ。でも、世界でメダルを取るには65kg級。(体力の落ちない)きちんとした減量をさせたい」と、万全を期して全日本王者を目指させる腹積もりだ。

 小幡邦彦コーチは「他のチームとの差はないと思っていたし、組み合わせも悪かった。そんな中での優勝で、底力を見せられたかな」と、選手の踏ん張りにちょっぴり鼻高々。

 2013年大会は早大に逆転され、2014年大会は日大に逆転され、いずれも2位に終わっていた。対抗得点で両大会とも2階級で0点があり、これが優勝を阻んだ。「ポカがあった」。その悔しさは小幡コーチの胸に刻まれているが、「3年生、4年生もその悔しさを経験している。逆に、拓大は優勝から離れているので、0点がある怖さを経験している選手がいない。その差が出たのではないでしょうか」と言う。

 「チーム全員の勝利です」という言葉に実感がこもっていた山梨学院大の2連覇だった。