2016.11.13

【全日本大学選手権・特集】61kg級で腕を磨く! リオ・オリンピック銀の樋口黎(日体大)が復帰戦で優勝

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 やっと取れた学生タイトルだ! 全日本大学選手権の61kg級は、8月のリオデジャネイロ・オリンピック男子フリースタイル57kg級銀メダルの樋口黎(日体大)が5試合を勝ち抜いて優勝した。

 オリンピック後、初の試合となった樋口は「緊張してしまいましたし、いつもは自分からどんどん攻めていけるのに、オリンピックでメダルを獲ったことで、確実に勝たないといけないプレッシャーがすごかった」と初戦や決勝で失点。久々の実戦に冷や汗をかいたようだ。意外にも樋口にとって学生タイトル初戴冠。「(オリンピック)銀メダルより、やっぱり金メダルがいい」と、うれしそうにメダルを見つめた。

 オリンピックのあと、約3週間は休養と帰省でマットから離れたが、9月上旬からは練習を開始。しかし、表彰などの出席もあり、練習量はオリンピック前より6~7割程度に落ちた。気持ちも「オリンピック前は自分の人生をかけて取り組んでいたけれども、切り替えができていなくて、甘くなってしまった」と追い込んだ練習ができなかった。

 樋口は、“フィジカル、メンタル問題なし。残るは体重だけ”と言われるほど、減量苦がたびたび話題になっていた。今回、61kg級に出場した経緯は「オリンピック後は階級区分の変更がある可能性がある。57kg級だと減量の繰り返しで自分のレベルが上がらない。実力を伸ばすために61kg級にした」と、まずは体作りを見据えて階級をあげてきた。

 61kg級は非オリンピック階級だが、国内に関しては57kg級と変わらぬ強豪が顔をそろえる。決勝の相手は、大学1年で学生&国体王者の成國大志(青山学院大)で、樋口が最も警戒した相手だ。立ち上がりにタックルで攻められて前半は0-4と追いかける展開になり、「成國選手、強かった」と苦笑い。

■12月の全日本選手権は61kg級出場予定だが…

 しかし、オリンピック銀メダルの実力は本物。「フィジカルは日本一弱いのですが、メンタルは日本一強いと思っている。ポイントを獲られても、ぶれないメンタルが僕にはあります」と、第2ピリオドにじわじわと成國を追い詰め、4点技でテークダウンを奪うと、得意のアンクルではなく、連続ローリングで追加点。パワーでも成長した一面を見せ、あっという間に10-4と逆転した。

 61kg級で大学チャンピオンになり、12月の全日本選手権は57kg級と61kg級の2階級で出場資格を得ることになったが、全日本選手権は61kg級に出場する予定だ。けれども、「来春は分からない。体の調子を見て、57kg級で世界選手権を狙うかもしれない」とも話した。

 例年、全日本選手権と全日本選抜選手権を両方制した選手に世界選手権の日本代表権が与えられている。別階級に出場してしまうと、全日本選手権で優勝したアドバンテージがなくなる可能性がある。「僕にとっては自分の体をつくりあげることが大切。スタミナはある方なので、明治杯(全日本選抜選手権)にアドバンテージがなくても、優勝してプレーオフも勝てばいい。そこまで含めて決勝だと思えばいい」と、持ち前のポジティブな思考を展開した。

 今大会は失点もして、「内容は満足できなかった。反省が残る」と口にしたが、いよいよ、来月は2連覇がかかる全日本選手権に“凱旋出場”する。今度こそ樋口ワールド全開で圧倒的な強さを見せられるか注目だ。