※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 総合で6位入賞を果たした岩手県チーム
1年前の和歌山国体では32位と下位に沈み、地元国体での奮起が期待されていた。少年の部はインターハイからの継続強化で、巣内哲司監督の母校・日体大や上野堅太郎コーチの母校・専大などへ積極的な出げいこで力をつけた。
成年の部は、今年から始まった女子53kg級に現役全日本選抜チャンピオンの菅原ひかり(種市高教)や、学生トップレベルの選手だった川瀬克祥(岩手県体協)を招へい。種市高出身で学生時代に両スタイルの学生王者であり、元全日本2位の金澤勝利(自衛隊)をエースに据えて国体に挑んだ。
計算通りに行かないのが勝負の世界。成年の部125kg級に出場した金澤は初戦で大学生に敗れて敗退し、得点は「0」に。エースの敗退に岩手県関係者は凍りついたが、誰も金澤を責める人はいなかった。巣内哲司監督は「金澤が負けたことは痛手でした。けれども、これまでの岩手を支えてくれたのは金澤。ずっと一人で頑張ってきてくれた」と振り返り、「(指導者の)僕らも金澤だよりでした。金澤が負けたことで、みんなでフォローしないといけない、という気持ちが芽生えてきたのかもしれません」。
6位で表彰される巣内哲司・少年監督(中央)
後半のグレコローマンでは、成年66kg級の川瀬が全日本1、2位を破って優勝。98kg級の横澤徹(盛岡市役所)も3位に入るなど追い上げ、最終的には団体6位へ。8位入賞を果たした。
巣内監督は「上出来。こんないい結果になるとは思っていなかった」と6位入賞に驚いた様子。川瀬や菅原に対しては「高校生にとって、とてもいい存在だった。大学卒業したばかりのトップ選手が雲の存在ではなく、身近にいるわけですから。高校生の指導もよくしてくれた」と即戦力以上の活躍をたたえた。
■5年越しの悲願がかなった宮古市での全国大会の開催
大会運営面では、予算の関係でマットのかさ上げ(マットステージの設置)ができなかったが、その他は滞りなく行われた。成年の濱道秀人監督は「みんなに感謝の気持ちを伝えながら運営を行いました」と振り返る。2011年のインターハイは宮古市で行われる予定だったが、震災で場所が変更された。5年越しの悲願がかなった宮古市での全国大会の開催だった。
試合会場全景
濱道、巣内両監督が口をそろえたのは、開会式の左京昂亮選手の選手宣誓についてだった。「あの宣誓の言葉が私たちの気持ちのすべてだと思う。一歩一歩前に進んで行こうと思います」。
国体が終わっても、インターハイと国体で培った強化のノウハウを生かして強化をしていく予定だ。濱道監督は「若い指導者を育てていこうと思っています。岩手国体であげたレベルを落とさないようにして、第2の岩間怜那(現姓栄、元世界2位=宮古市出身)を作りたい」と、今後もオール岩手で盛り上げていく目標を掲げた。