2016.10.09

【岩手国体・特集】高校3冠も派手なガッツポーズなし! 三輪優翔(和歌山・和歌山北高)、石黒隼士(埼玉・花咲徳栄高)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 春の全国高校選抜大会、夏のインターハイ、そして高校の大会を締めくくる国体の3つのビッグタイトルを制したものだけに与えられる称号、“高校三冠王”。今年は74kg級の三輪優翔(和歌山・和歌山北高)と84kg級の石黒隼士(埼玉・花咲徳栄高)が達成。ともに全試合圧勝しての優勝で、同世代では敵なしの強さを見せての快挙だった。

■目指していた大技爆発なしに表情はさえず…三輪優翔

 74kg級の三輪は、昨年は春の選抜と国体は優勝したが、インターハイで不覚。2年生で三冠を逃した苦い経験をばねに、「今年こそ絶対三冠を獲る」と言い聞かせて臨んだ。決勝は、わずか3分41秒でテクニカルフォール勝ちを収めたが、三輪の表情はさえなかった。

 三輪は「うれしかったのですが、自分のやりたいことができなくて(試合の内容は)ダメでした。自分から攻めて正面タックルの4点を狙っていたけど、ちょこちょこしたタックルになってしまった」と、練習してきた大技を出せなかったことを悔やんだ。

 三冠を目指したことのプレッシャーは特になく、「優勝して今年も和歌山県に貢献したい」という気持ちでマットに上がったという。大技は出せなかったが、テークダウンからアンクルホールドで追加点を重ねる攻めのパターンができあがった感はある。けれども三輪は「4-0の試合もあって、攻めきれなかった」と満足せず、準決勝の内山皓太(茨城・霞ヶ浦高)戦を反省点に挙げた。

 高校三冠のタイトルを引っ提げて、12月には全日本選手権の出場を予定している。「6月の全日本選抜選手権は1回戦負けで、力の差を見せつけられた」と、シニアのレベルの高さはすでに感じている。「すごい先輩たちがたくさんいるが、頑張りたい」と、シニアの壁に精いっぱい挑戦することを誓った。

■世界カデット選手権での惨敗に、やり直しの気持ち…石黒隼士

 84kg級の石黒は2年生での三冠王達成だった。兄で昨年の三冠王者、石黒峻士(埼玉・花咲徳栄高卒=現日大)よりも1年早く偉業を達成したが、「記録は達成したが、実力がまだまだ。兄はすごい存在。それを超えたことにはなりません」と謙遜した。

 84kg級は、昨年、山崎弥十朗(埼玉・埼玉高=現早大)がタイトルを総なめにした階級で、“ポスト山崎”の座を確実にたぐり寄せ、1年かけて“石黒の階級”を定着させた。石黒はこれまで、大一番で勝つと体全身で喜びを爆発させてきたが、今回は派手なガッツポーズはなかった。

 「これまでは日本で一番になることがうれしかった。けれども、この夏、“世界”を経験して国内で勝って喜んでいられないと思うようになりました」。

 約1ヶ月前にジョージアで行われた世界カデット選手権85kg級に出場して1回戦負けに終わったことが、石黒の気持ちを大きく変えた。今回も三冠獲得よりも自分のレスリングをしっかり出せるかどうかに焦点を置いた。「それが全然できなくて。プレッシャーをかけてしっかり相手を崩してから、タックルに入るレスリングを心掛けていたのに、すぐ入ってしまって」と、内容も満足できなかった。

 「世界で活躍するために、精神面、体力面、そして私生活からやり直します。来年の春、JOC杯で勝って、来年は世界で活躍できるようにしたい」。

 高校2年生ながら世界を意識した石黒。来年は高校タイトル総なめに加えて、世界での活躍も目標に掲げた。