※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
■2019年のプレ・オリンピック大会も協会が資金集め 華やかな雰囲気の中で行われている全日本選手権。ワンランクアップするのは、いつの日?
福田 入場を有料にして、入場料収入を目指したい気持ちはある。しかし、有料にすることで、煩雑な問題が出てくる。以前に有料でやったことがあるが、入場券を各チームに割り振ってお願いしたところ、なかなか売れず、ほとんどがチーム持ちになってしまってブーイングが起きた。入場が無料と有料では会場使用料が違う。さらに、有料の場合は税金がかかり、価格、売れた枚数、残った枚数、その所在を含めた収支報告を詳細にやる必要が出てくる。今の協会事務局のスタッフ数では、とてもさばききれない手間となる。総合的に判断し、無料で多くの人に見てもらおう、というままになっている。
――オリンピックの東京開催が決まり、スポーツ予算が増えたと言われているが、事務局スタッフの人件費などには、相変わらず回ってこないのでしょうか。ベースの部分の充実がなければ、競技は発展しない。
福田 何度も言っているが、何度言っても変わらない。さっきも話に出たが、大会開催の経費も出ない。オリンピック前年にはプレ大会を開催しなければならないが、これも協会が集めないとならない。
――オリンピックの組織委員会からは出ないのですか?
福田 出ない。どの競技団体も自分のところで資金を集めてリハーサル大会をやらないとならない。内情を知らない人はいろいろ言ってくるが、簡単にはできないのが現実だ。
■強化がおろそかになる資金集めはしない!
――広告代理店は、がっぽり稼げる人気競技はサポートするが、そうでない団体は相手にしないのが現実ですか?
福田 広告代理店は、根本は利益追求の企業。強化という根本を無視して金儲けに走る場合があるので、必ずしも入れようとは思わない。現在、大手ではない代理店をひとつ入れていて、そこを経由して何社か獲得しているが、強化の部分はおろそかにしないという趣旨を理解してもらっている。
芸能人が来るようになった全日本選手権だが、選手を"芸能人"にはしない!
福田 本末転倒の資金集めはできない。金を出す側は選手を利用しようとする。選手はそちらにばかり気をとられ、強化に集中できなくなる。
――そこまでの信念を持って資金集めをしているとは思わなかった。レスリングが注目されてきて、レスリングを通じてひと山当てようとする人は多くなってくると思うが、見返りを求めずにレスリングを愛し、情熱を傾ける人ばかりではない。
福田 レスリングの競技力アップを応援してくれるのか、金儲け目当てなのかを見極めていきたい。
――強くなってお客さんも入る、が理想だと思う。最後に、来年以降の協会の体制についてお聞きしたい。一部で「理事の70歳定年制を導入しているにもかかわらず、70歳を超えている人が理事会にいるのはおかしい」という声がある。この点はいかがでしょうか。
福田 私に関して言えば、ロンドン・オリンピックが終わり、70歳を超えた時に会長を辞めようと思った。いつだったかの理事会で、馳浩副会長(当時)が「東京オリンピックまでやってもらわなければ困る」と発言し、全員賛成でやることになってしまった(注=国際連盟の役員をやっている場合は定年制を適用しない、という規定がある)。やる以上は、資金集めをせざるをえない。そのほか、70歳を超えても副会長などの重責を引き続きお願いしている方はいるが、規定にしたがって理事は外れてもらっている。議決権があるのは理事だけだ。逆に、理事ではなくとも、若い人間を特定理事として理事会に出席させ、意見を述べてもらうようにしている。若い人の意見を積極的に取り入れたい。
――年配の人が居並ぶ中では、自分の意見をずばりと言えないのが現実だ。若くしてJOC幹部と大げんかした福田会長のような人間ばかりではない(注=42歳で迎えた1984年ロサンゼルス・オリンピックの監督の時、規定違反となる開会式でのカメラ持ち込みをめぐって当時のJOC幹部と真っ向からやりあった)。
福田 東京オリンピックへ向け、若い世代への移行がスムーズにいく必要はある。来春の役員改選に際して、新たな体制づくりを話し合いたい。
――東京オリンピックの勝利と、それ以降も続く、IT時代に適応した組織づくりを期待します。
(聞き手=樋口郁夫)