※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) ジョージアから帰国した女子チーム
3階級にわたって3年連続優勝を飾った49kg級の須崎優衣(JOCエリートアカデミー/東京・安部学院)をはじめ、出場9階級中8階級で金メダルを獲得し、リオデジャネイロ・オリンピック、世界ジュニア選手権(フランス)に続いてカデットでも圧倒的な強さを見せつけての帰国。オリンピックに国別対抗得点はないが、実質的に”優勝”であり、昨年に続いて3世代のカテゴリーで世界一に輝いた。
吉村祥子監督(エステティックTBC)は「この上ない成績でみんなよくやりました。団体優勝を目標にして、一人一人が役割を果たしてくれた」と選手の健闘をたたえた。38kg級は派遣がなく、1階級減のハンディを背負っていたが、それでもロシアに22点の大差をつけての優勝は、次世代の強化にも取り組んできた結果だろう。
今回の大勝はオリンピックで5つのメダルを獲得したことが大きかったと言える。「リオを見たジュニアの選手が世界ジュニア選手権で頑張って、その結果を知ったカデットの選手たちがまた頑張ってと、いい流れができたかなと思います」と吉村監督。
女子の日程は2日間で、初日に全階級で決勝に進んで3人が優勝し、団体優勝へ大きく前進した。けれども吉村コーチは危機感を募らせた。「優勝間違いなしと思ってロシアとの点差を見たら、(1階級不在のため)3点リードされていました。それでまたチームが一致団結して盛り上がったこともよかった。試合が終わった選手も、次の日は総出でアップパートナーとして汗を流し、団体優勝を目指しました。その結果、(2日目は)5階級全員が金メダルを獲り、団体優勝を獲ることができました」。
個人競技のレスリングだが、今回はチームが一致団結したことが功を奏したようだ。吉村監督は「今回のチームの中でも国際大会の経験が豊富な選手が、経験の少ない選手を引っ張って、下級生の選手は先輩たちに引っ張られて、まとまりがありました」と、チーム一丸となって世界一の座を死守したことを振り返った。
今回は冨田和秀コーチ(自衛隊)が国際大会のコーチデビューを果たした。「本当に初めてで、吉村コーチにいろいろ助けてもらいました。中学や高校の生徒を預かるのは初めてでしたが、出身クラブが同じ選手もいたおかげで、やりやすい面もありました。もっと語学などを磨いて、国際大会でコーチの経験を積みたい」と今後の抱負を話した。
金8個、銀1個で団体優勝
リオデジャネイロで先輩たちが活躍していて、自分もそのようになりたいと思い、刺激をもらいました。リオで学んだことの一つ、『強い気持ちで最後まで闘い抜く』ことを出し切ることができました。来年はジュニアやシニアの世界選手権に出場して頑張りたいと思いました。登坂選手は、憧れの選手ですけれども、一歩一歩近づいて、いつかは追いつきたいです。
次は国体で53kg級に挑戦します。順調に勝ち上がれば決勝で菅原ひかりさんと対戦する組み合わせです。ぜひ挑戦してみたいです」
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■40kg級優勝・櫻井つぐみ(高知・野市中)「緊張したのですが、自分のレスリングができてよかったです。先輩たちが自分を引っ張ってくれたので、ついていきやすかった。内容も無失点で、練習していたことができてよかったです。今後も国内の予選で勝って、世界大会に出ていきたいです」
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■43kg級優勝・植野麻奈美(京都・網野高)「国際大会は中3の時のアジア・カデット選手権以来2回目で、世界大会は初めてでした。すごく緊張したけど、周りのみなさんが支えてくれたので、リラックスできました。コーチからもアドバイスもらえて助かりました。内容はよかったけど、細かい技がいつも通りにできなくて、タックルに入ってからの処理がもたついたので、今後の課題です。また国際大会に出て金メダル取りたいです」
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■46kg級優勝・吉村涼菜(埼玉・埼玉栄高)「軽量級の選手がみんな優勝していて、私も軽量級の一人なので優勝したいと思っていました。緊張したけど金メダルが取れて良かったです。1回戦と準決勝はとても焦ってしまって無駄な失点があったので修正したいです。アジア・カデット選手権と世界ジュニア選手権で埼玉栄のチームメイトが優勝していた。3人で優勝するって約束していたので、それが果たせてうれしい」
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今年でカデット世代が終了、来年はジュニアへ挑む選手たち
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■56kg級優勝・澤葉菜子(愛知・至学館高)「初めての国際大会で、緊張というより、恐怖心が大きかった。みんなが『大丈夫、大丈夫』と支えてくれました。インターハイでは同門の後輩に負けて連覇を逃し、その悔しさをこの大会にぶつけて優勝できました。準決勝は1点差でギリギリだったけど、最後の2秒くらいでの逆転勝ちでした。オリンピックでも最後の最後で逆転した試合がたくさんあったので、それで自分も頑張れた。最後まであきらめない気持ちがインターハイではなかったような気がします」
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■60kg級優勝・小玉彩天奈(高知・高知東高)「1週間前に右ひじのじん帯を痛めてしまって不安でした。オリンピックや世界ジュニア選手権で日本選手が金メダルを取っていたので、勇気と自信をもらって頑張れました。ひじの痛みはありましたが、けがしてもいいから、この後がどうなってもいいから、勝つことだけを考えていた。チームは団体優勝が目標で、自分が足を引っ張ったらどうしようと思ったけど、試合に入ったら自分が一番という気持ちでやり抜けました。もっと国際大会の経験を増やしていきたいです」
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■65kg級2位・森川美和(東京・安部学院高)「最初で最後の世界カデット選手権。決勝のロシア選手は、2月のクリッパン国際大会で0-7で負けていて、今までで一番悔しい思いをした相手。リベンジするために練習してきたのに、負けてしまった。敗因はパワー不足。タックルに入ってからの引き付けが甘く、取り切れなかった。同じ年なので来年はともにジュニアになる。次こそは絶対に勝ちたい。次(全日本選手権)は土性さんも出てくると思うので、決勝まで上がって土性さんと対戦したい」
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■70kg級優勝・松雪泰葉(愛知・至学館高)「金メダルは獲れましたが、ロシアが強くて…。一度投げられたりして、シーソーゲームで点の取り合いになってしまった。負けるかと思ったけど、最後まであきらめずにできた。オリンピックは現地に行き、先輩たちが最後まであきらめない姿を見て、『最後まであきらめずやれば勝てるんだ』と思いました。今回は、同世代の大会でしたが、自分も勝てるんだという自信にはなりました。4年後、自分が金メダルとれるように頑張っていきたい。来年はジュニアで金メダルを取りたいです」