※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2年連続メダル獲得の藤波勇飛(山梨学院大)と小幡邦彦コーチ(山梨学院大職)
藤波の父でもある俊一監督(三重・いなべ総合学園高)は「優勝を目指していたので、銅メダルは悔しいが、2年連続のメダルなので…」と、息子の最低限度の”ノルマ”達成をねぎらいつつも、昨年のチャンピオンや最大の敵と見ていた米国選手(ともにジュニアの年齢)が出場しなかったので、「チャンスといえば、チャンスだったんですよね」と残念そう。
「去年も(今年の)インカレも、リードした時にどういう展開をするかが課題として残ったが、結果として改善されていなかった」という厳しい評価も下した。敗れたエネス・ウスル(トルコ)は昨年、藤波より下の5位だった選手。さほど印象には残っていない選手だったという。「この世代の選手は、一気に伸びるケースがありますね」と、世界で勝つことの厳しさ実感したようだ。
ただ、敗者復活戦で意地を見せ、圧勝続きで勝ち上がったことは評価した。
74kg級に出場したユース・オリンピック王者の山崎弥十朗(早大)は、優勝した米国選手と2-3の接戦を展開し、惜しい内容だったそうだが、「タックルというより腕を取って強引にもっていくヨーロッパ・スタイルへの対応がまだまだ」とジョージア選手相手の負けを分析。こうしたスタイルの選手相手の闘いに課題を残したという。
■初戦黒星でも落ち込むことなく敗者復活戦を勝ち上がる…藤波勇飛
藤波は「悔しいですが、2年連続でメダルを取れたので…」と、父と同じような言葉。父と違う点は、負けた相手のことは、昨年闘うことはなかったが、しっかりと覚えており、「今年は欧州(ジュニア)選手権2位の選手。強い選手でした」と、ある程度はマークしていたこと。
「最後の最後にポイントを取りにくる選手。見事に術中にはまってしまった」と言う。「これも経験?」との問いに、「経験、経験…、ではいけない」と厳しく振り返った。
国際大会6大会目で、初戦で敗れたのは最初の大会だった2012年世界カデット選手権以来2度目。その時は敗者復活戦に回れなかったので、負けた後に試合をするのは初めてのこと。落ち込むことなく、むしろ「絶対にメダルは取って帰る」という気持ちになれたことで自分の動きができたという。
「優勝だけを狙っていましたが、負けたら負けたで、気持ちを切り替えられてよかったです」。こうした経験が精神力を強くしていくことは間違いないだろう。
出発前にあった全日本学生選手権では、全日本選抜選手権の70kg級王者を破って優勝しており、12月に予定されている非オリンピック階級の世界選手権(ハンガリー)の代表候補に浮上した感もある充実ぶり。「どうなんですかね…。出たいという気持ちはあります」とのことで、本来の65kg級での闘いを含め、年末へ向けての闘いから目が離せそうにない。
西日本の大学から参加し、5位入賞を果たした55kg級の田代拓海(福岡大)は「3位決定戦の相手は今年のアジア・ジュニア選手権のチャンピオン。チャレンジャーとして挑んだけど…。悔しいです」と、2点差で敗れてメダルを取れなかったことを悔やんだ。「途中で4点取られてしまったのが痛かった。3位決定戦までいったのなら、メダルを取りたかった」と言う。
男子では、西日本の大学から毎年1選手程度は出場しているこの大会だが、5位入賞となると、2010年に50kg級の合谷成喜(日本文理大)が3位に入賞して以来。大学レスリング界の東西格差は気になるところで、「自分が頑張ることで、西日本のレベルが上がっていってくれればいいですね」と話し、今後の健闘を誓った。