2016.09.03

世界ジュニア選手権出場の男子グレコローマン・チームが帰国

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 フランス・マコンで行われている世界ジュニア選手権に出場した男子グレコローマン・チームが9月2日、羽田空港着の日本航空で帰国した。55kg級の難波陽(青山学院大)が、現在の年齢区分になってから男子グレコローマンで初めて銀メダルを取る成績。96kg級の奈良勇太(日体大)も5位入賞を果たし、重量級の意地を見せた遠征だった。

 笹本睦監督(日本協会アシスタントコーチ)は「難波と奈良は強い選手にも勝っての成績。海外でも通じる力を見せてくれた。しかし、他の選手はほとんどが1回戦負け。力負けであり、試合運びや技術面が足りない。2020年東京オリンピックにからむと思われる選手。しっかり強化したい」と振り返った。

 出発前、「スタンド戦は引けを取らないはず」と言っていた。確かに押し負けないことが多かったが、「ポイントを取る技がなかった」―。スタンドで押し負けないだけでは、世界で勝ち抜くことはできない。ポイントを取れる技を持っていなければ勝利につなげられないわけで、技術習得が今後の課題だ。

 7日からは東京・味の素トレーニングセンターで学生による合宿が予定されていて、今回のメンバーも参加する。「下(の世代)を底上げしないと日本全体が強くならない。下を強くして上にプレッシャーをかけることで、上が結果を出し、全体を引き上げてくれる」と話し、すぐに強化に取り組む予定だ。

 大学で教えている選手が銀メダルを取った長谷川恒平コーチ(青山学院大職)は「(初戦で闘った)ウクライナは強い選手。最初に胴タックルを決めて、自分のレスリングを貫けた。得点能力はある選手。2回戦、準決勝と進んで試合間隔が短くなってもやっていけるだけの体力もあったので、(準決勝で)イランにテクニカルフォール勝ちできた」と、技術、体力ともに合格点を与えた。

 決勝は微妙な首投げを受け、2点なら取り返せると思ってチャレンジ(ビデオチェック要求)せずに続けさせたが、守られてしまい、コーションを2回与えた攻撃も実らなかったという。しかし、しっかり攻めていたそうで、「外国選手と同等に闘えるという自信がついたはず。結果以上に、攻められたことが大きい」と話し、「金に近い銀。内容は満点に近かった」と評価した。

 5位になった奈良については、「得意な技があったから。ジュニアで世界5位というのは、そうそういなかったと思う」と話し、今後につなげてくれることを望んだ。

 他の選手については、「やはり経験が不足している。グレコローマンを本格的に始めて1、2年の選手もいるから仕方ない。今回のこときっかけに、どうやったら世界で勝てるかを考えて練習し、外国選手相手の勝ち方を身につけてほしい」と要望した。

■シニアでは、「チャレンジャー」の難波、「全日本王者を目指す」という奈良

 銀メダルの難波は「銀メダルはよかったけれど、(決勝の)試合内容があと少しだったので悔いが残る。手放しでうれしい、というわけにはいかない。自分は攻めていたのに、(コーションを)取ってもらえなかった。言い訳だし、海外での試合では仕方ないことだが、そんな状況下でもポイントを取り切る力を持たないといけない」と反省の弁。

 それでも、今やグレコローマン大国に成長したイランの選手にテクニカルフォール勝ちするなど、内容があったことは間違いない。「どの試合でも自分のレスリングは貫けた、やってきたことは間違いないことが分かった」と言う。

 ただ、今回の結果は「ジュニア55kg級でのもの」ということは十分に承知している。「シニアの59kg級ではペイペイだと思う。体を大きくして、そこで闘える力を身につけたい。そこを乗り切らないとならない」と言う。次の大会は10月の全日本大学グレコローマン選手権になると思われるが、「大学内での競争が厳しい。まず出場権を取ることです」と話し、59kg級ではチャレンジャーであることを強調した。

 5位入賞の奈良は「いつも練習でやっていることが試合で出せるようになった。アジア・ジュニア選手権で優勝していたイラン選手にも勝つことができたのは、自分の力が少しずつ上がっているからだと思う。外国選手とパワーの差は感じなかった。」と表情は明るい。

 2試合目のジョージア選手には極めそり投げを受けてしまった。もろ差しにいったら抱えられ、投げられてしまったとのこと。ヨーロッパの選手の思い切った投げ技に、「まだ免疫ができていないですね」と経験不足も感じ、課題も多くみつかったようだ。

 5位入賞といっても、難波と同じく「ジュニアのカテゴリーでのこと。シニアでも勝てるようにしっかり練習したい」と言う。難波と違うことは、「国内では負ける気はしない」という点。「全日本選手権で優勝して冬の遠征に参加したい。来年の世界選手権に出られるよう頑張りたい」と、気持ちは12月の全日本選手権-。