※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2回戦、終了間際のがぶり返しで逆転勝ちした高谷惣亮(青=ALSOK)
3回戦の相手は、3月のアジア予選(カザフスタン)で闘ったガリムジャン・ウセルバエフ。リードを奪ったものの、ラスト30秒にがぶり返しを食らって逆転負け。ウセルバエフも準決勝で敗れたため、高谷の敗者復活戦の道も断たれた。
アジア予選の決勝でも敗れているが、けがをおして出た高谷が大事をとって途中棄権だった。「カザフスタンの選手には勝てると思った」と、試合展開は高谷が終始握っていたからこそ誤算だったのは、がぶり返しがスタンドからの技とみなされ4点に判定されたことだ。
高谷は「僕は2点だと思っていたら4点だった」。2-0から一気に3-4と逆転された。ビッグポイントの差により、1点を追加して4-4としても負けてしまうことには変わりない。
セコンドはチャレンジ用の人形を握りしめていたが、スタンドからの攻撃が認められる可能性が高いとみて、チャレンジを回避。残りわずかな時間に、高谷の真骨頂であるタックルでの逆転を期待した。
だが高谷は満身創痍だった。首の負傷は深刻なうえ、2回戦で右ひざのじん帯を再び損傷していた。その状態で最後の30秒にかけたが、相手が逃げ回り、得点を奪うことはできなかった。
■日本男子の顔として走り続けた4年間
「ロンドンから4年間、日本で長いこと勝ち続けていろんなことチャレンジしながらここまできた。重量級でメダルを獲るのはきついけど、僕ならできると思ってやってきた。それなのにメダルがとれなくて悔しい」。
3回戦はがぶり返しを受けてしまって逆転負け
自身のピークが今だと感じているからこそ、高谷は今回にかけていた。「リオが集大成だと思っていた。(今後)今以上にいけるかと思うと、年齢もきつい部分がある」。当面現役は続ける意思を示したが、階級などは少し考える含みを持たせた。
ロンドン大会が終わった後から、リオデジャネイロ大会まで、高谷は紛れもなく日本男子レスリングの顔だった。今回のオリンピック代表の中で、2013年から昨年までずっとナショナルチームのメンバーだったのは高谷ただ一人。「技術だけじゃ勝てない。フィジカルの強化が重要」と、体つきはこの4年全く違うレベルまで押し上げてきた。
また、メディア露出もレスリングの普及になると見込むと、何でも前向きにやってきた。「僕は取材が大好き。取材されることが僕の力になる」と、練習への姿勢からマスコミ対応まで日本代表選手の模範となる一人だった。
ここまで頑張れた理由はただ一つ。「日本は軽量級がお家芸だと言われるのは癪(しゃく)にさわる。東京オリンピックに向けて、この階級でも勝てるんだって示したかった」からだ。まだ27歳。「勝負の世界は甘くなかった」という反省を活かして、来年の世界選手権(フランス)で再びメダルを目指してほしい。