※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
金メダル獲得の(左から)土性沙羅、伊調馨、登坂絵莉=撮影・保高幸子
伊調は、2004年アテネ大会から4大会連続の優勝で、あらゆる競技を通じて女子選手初の個人戦4連覇を達成した。男子では4人が達成しているが、レスリングではいなかった。
初戦の2回戦から、やや慎重な試合運びながら安定した内容で勝ち上がり、準決勝で昨年世界選手権3位のユリア・ラトケビッチ(アゼルバイジャン)にテクニカルフォール勝ち。決勝で、2014年世界選手権決勝の相手、ワレリア・コブロワ(ロシア)に登坂と同じく終了間際まで1-2でリードされていたが、ラスト10秒でテークダウンを取り、3-2と逆転し、4連覇を決めた。
登坂は世界選手権3連覇に続く優勝で、4年連続で世界一へ。女子で世界選手権3連覇とオリンピックの4年連続で世界一に輝いた選手としては、吉田沙保里と伊調に続く快挙となった。
初戦の2回戦から順調に勝ち上がり、準決勝で2月のアジア選手権(タイ)で敗れた孫亜楠(中国)を8-3で撃破。決勝で昨年の世界選手権決勝の相手、マリア・スタドニク(アゼルバイジャン)との再戦となり、0-2とリードされたが、ラスト58秒で1-2へ。ラスト数秒にテークダウンを奪い、3-2で勝って金メダルを引き寄せた。
土性は3年連続で世界選手権のメダルを手にしており、初の世界一がオリンピックの優勝となった。60kgの後半の階級で世界一を手にしたのは、1996年世界選手権65kg級で浦野弥生が優勝して以来。翌年の階級区分変更で68kg級となり、その後の67kg級、69kg級を通じて初の優勝となった。
1回戦からの出場となった土性は、2013年の世界選手権で敗れていたアリナ・スタドニク(ウクライナ)にリベンジし、2回戦、3回戦も勝利。準決勝で昨年の世界選手権5位のジェニー・フランソン(スウェーデン)を破った。決勝は、2012年ロンドン・オリンピック72kg級優勝で昨年の世界チャンピオンのナタリア・ボロビエワ(ロシア)と対戦し、0-2からラスト30秒でテークダウンを奪い、2-2のビッグポイントの差で勝った。
各選手の試合結果は下記の通り。
◎女子
【48kg級】登坂絵莉(東新住建) 優勝=18選手出場
決勝 ○[3-2]Mariya Stadnik(アゼルバイジャン)
《試合経過》第1ピリオドの1分過ぎ、スタドニクが片足タックルで攻撃。登坂はこらえきれずに場外に出て1失点。第2ピリオドは、アクティブタイムを1度ずつ課されて、1-2のスコアで終盤に。ラスト数秒で登坂が片足タックルに入り、執念でテークダウンを奪って2点。3-2で逆転の金メダルを獲得した。
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準決勝 〇[8-3]Sun Yanan(孫亜楠=中国)
《試合経過》第1ピリオド、登坂はスタンドで振られてバックを奪われて2失点。第2ピリオドに入り、相手のアクティブタイムの間に登坂がバックを奪い、得意のアンクルホールドを3度決めて大量リード。最後に1ポイントのコーションを受けるが、勝負に影響はなく、2月のアジア選手権で敗れたリベンジを果たした。
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3回戦 〇[11-2]Haley Ruth Augello(米国)
《試合経過》第1ピリオドの後半に相手にアクティブタイムが課され、ポイントをやらなかった登坂に1点が入る。第2ピリオドの序盤、今度は登坂にアクティブタイムが課される。相手がバックポイントを奪ってニアフォールを狙った瞬間を登坂は逃さず、体を預けて2点。バックポイントやアンクルホールドで得点を重ねた。終盤にもバックポイントからエビ固めで追加点。11-2と大勝した。
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2回戦 〇[6-0]Zhuldyz Eshimova(カザフスタン)
《試合経過》第1ピリオドの開始25秒、登坂が両足タックルを決めて2点。第2ピリオドは片足タックルから時間をかけてテークダウンを奪って2点。終盤にも片足タックルを決めて2点を追加した。
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1回戦 BYE
【58kg級】伊調馨(ALSOK) 優勝=20選手出場
決勝 〇[3-2] Valeriia Koblova Zholobova(ロシア)
《試合経過》第1ピリオド、最初にアクティブタイムを課されたのはコブロワ。伊調は30秒を守って1点。しかし、第1ピリオドの終盤にはコボロワの片足タックルを切れずに2点を失い、1-2と逆転される。第2ピリオド、伊調もタックルを繰り出すがコブロワのディフェンスに阻まれる。しかし、コブロワが不用意にタックルに入ったところをつぶしてバックへ。終了間際にテークダウンを決め、逆転の金メダル。オリンピック4連覇を決めた。
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準決勝 〇[Tフォール、2:20=10-0]Yuliya Ratkevich(アゼルバイジャン)
《試合経過》伊調は第1ピリオドの40秒でバックポイントを奪い、相手の腕を極めて連続ローリング。第1ピリオドでテクニカルフォール勝ちした。
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3回戦 〇[3-1] Elif Jale Yesilirmak(トルコ)
《試合経過》第1ピリオドの1分すぎ、伊調にアクティブタイムが課され、得点できず1失点。第1ピリオドの終盤にタックルで2点を返して2-1で折り返し。第2ピリオド、今度は相手にアクティブタイム。ポイントをやらなかった伊調に1点が入って3-1で試合終了。
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2回戦 〇[Tフォール、5:43=11-0]Marwa Amri(チュニジア)
《試合経過》序盤は相手に足を触らせるなど、動きが硬い伊調だったが、相手のアクティブタイムで1点、第1ピリオドの終盤にタックルで2点を加え、3-0で折り返し。第2ピリオドは、相手が前に出てきたところをかわしてバックを奪って2点。その後もタックルから最後はレッグホールドで2点を追加するなど、最終的に11-0でテクニカルフォール勝ち。
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1回戦 BYE
【69kg級】土性沙羅(至学館大) 優勝=18選手出場
決勝 ○[2B-2]Natalia Vorobeva(ロシア)
《試合経過》第1ピリオドの1分15秒、土性がアクティブタイムを取られ、30秒間でポイントを取れずに1失点。第2ピリオドもアクティブタイムを取られ、1分30秒の段階で0-2とされてしまった。このあと土性が攻めたが、ボロビエワの攻撃も受け、一瞬バックに回られかけたが、うまくすり抜けると、相手の左脚にタックルを仕掛けてテークダウン。ラスト30秒で2-2へ。そのままのスコアで試合終了となり、ビッグポイントのある土性が勝った。
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準決勝 〇[7-2]Anna Jenny Fransson(スウェーデン)
《試合経過》第1ピリオド、土性はパワーのある相手に組みつかれ、場外に押し出されて1失点。第2ピリオドも土性はアクティブタイムで得点できずに、0-2とされてしまうが、後半の攻防でカウンターからバックポイント。2点を加えて逆転し、終盤にはダメ押しの4点の投げ技を決めた。
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3回戦 〇[7-2]Dorothy Erzsebet Yeats(カナダ)
《試合経過》第1ピリオド、バックポイントで2点を先制された土性だが、後半にアクティブタイムを守って1点。第2ピリオド、タックルが決まって2点。終盤はカウンター攻撃で得点を重ねて7-2で勝ち抜いた。
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2回戦 〇[Tフォール、4:11=12-0]Buse Tosun (トルコ)
《試合経過》第1ピリオド1分56秒、タックルからテークタウンで2点。さらにカウンタータックルで2点。場外ポイントで1点。その後も一方的に攻めて4分11秒でテクニカルフォール勝ち。
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1回戦 〇[11-2]Alina Stadnik Makhynia (ウクライナ)
《試合経過》第1ピリオド45秒、土性がタックルで2点。タックル返しで2失点するが、もつれた後、バックを取って1点、ニアフォールで2点を追加する。さらに場外ポイントで1点。6-2で第1ピリオドを終了。第2ピリオド、相手が攻めてきたところをカウンター攻撃で2点。終盤にもタックルで決めて危なげなく勝利した。