2016.08.07

【インターハイ/男子個人戦・特集】グレコローマンで“カイト対決”を制し、山梨県勢初の2年生チャンピオンへ…50kg級・稲葉海人(山梨・韮崎工)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 グレコローマンでフリースタイルを制す! インターハイの男子個人50kg級は、関東高校大会グレコローマン王者の稲葉海人(山梨・韮崎工)と同フリースタイル王者の森川海舟(東京・自由ヶ丘)の決勝となり、稲葉が8-6で優勝。2年生で全国の頂点に立った。

 稲葉は東京出身。グレコローマンで評判の高い韮崎工で本格的にグレコローマンを習いたく、中学3年生の時から山梨に移り住んで今に至っている。決勝の森川は、東京・AACCの後輩で、時にウォーミングアップを共にする同志だ。

 稲葉は「海舟は、準決勝で春(全国高校選抜大会)の王者、松井さん(涼=岐阜・中京)に勝って上がってきた。1年生で松井さんに勝ったのだから、怖いという気持ちがありました」と振り返る。けれども、森川は1年生。「先輩だったので、負けたくない」という気持ちがその不安を吹き飛ばした。

■エリート選手の後輩と同名対決

 森川は2年連続全国中学生王者、3年連続全国中学選抜王者の肩書を持つルーキー。決勝では、手足の長さを生かした高速タックルで攻めた。稲葉はグレコローマンの動きで対抗し、タックルを切ってつぶしてバックに回って得点し、グラウンドでもつれたら、グレコローマンで培ったパワーでねじ伏せた。「全試合、徹底してグレコローマンをやりました。タックルを切ってつかまえ、つぶしてバック…。自分の形はできたと思う」と、“グレコローマン”でインターハイを制した満足感に浸っていた。

 同じクラブ出身の両者は、字は違えど名前も同じ「カイト」と読む。稲葉は「海舟は小さい頃から強くて有名。『強い方のカイト』と比較されることもありました」と苦笑い。その森川を倒したのだから、自分も“強いカイト”になれたかと問うと、照れ臭そうに「はい」と答えた。

■山梨県勢初の2年生王者 あこがれの文田先輩を超える

 文田敏郎監督は「2年生でインターハイチャンピオンは、県勢初の快挙です。息子の健一郎(現日体大)は3年で優勝。それを超えました」と、稲葉が記録を塗り替えたことに大喜び。文田も差してがぶってバックという徹底したグレコローマン・レスリングで最後のインターハイでは藤波勇飛(三重・いなべ総合学園=現山梨学院大)らフリースタイルの猛者をねじ伏せたのは記憶に残る熱闘だ。

 文田の大一番を、中学2年生だった稲葉は実際に長崎の会場で見ていた。「夏休みで、一緒に連れて行ってもらって、健一郎先輩が優勝するのをこの目で見ました。かっこよくて憧れ、自分の目標になりました」。ますますグレコローマンに傾倒した結果、2年生で文田と同じ地位まで来た。「いつか、健一郎先輩に追いつけるようにしたい」と言う。

 韮崎工OBの米満達弘(現自衛隊)がオリンピックで金メダルを獲って4年。リオデジャネイロ・オリンピックの年に、韮崎工に新しいスターが誕生した瞬間だった。