2016.06.17

【全国中学生選手権・特集】新会場で大会運営リニューアル! 熊本地震の義援金集めも

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 2019年茨城国体に向け、茨城県立スポーツセンターが建て替えられることになり、今年の全国中学生選手権は会場を青柳公園水戸市民体育館に移して行われた。今年の大会は場所だけでなく、運営面も進化。毎年最高記録を更新している出場選手数は「596人」となり、大幅に記録を更新した。

 全国中学生連盟の沼尻久会長は「これだけの多くの選手が集まり、非常にうれしいです」と満面の笑み。

 600人の大台が見えてきたことについても言及し、「人数が増えることで運営面の課題は出てくるが、オープン参加方式は絶対に変えません。600人来ても800人来ても、この日程でやります。連盟はどんなに人数が増えてもウエルカムです。来年も多くの選手がエントリーすることを楽しみにしています」ときっぱり。

 現在は4面マットで行っているが、人数が増えた場合はマット数や審判員を増やしてでもやり切る方針を示した。

■マットの「今」がわかる特大進行表を作成

 男子の中軽量級では7試合を勝ち抜かないと優勝できない階級もあったが、森下敏清審判長による工夫を凝らした運営が功を奏して、全体的にスマートな進行が光った。

 以前の会場は、アリーナに入る入口が多数あったため、アリーナ内に試合に関係ない人であふれて試合進行の妨げになることが時たまあった。今回は選手とセコンドの出入り口を一ヶ所に制限し、スタッフが試合順を確認した選手のみ中に入れるようにした。

 これまでは、森下審判長が試合を止めて、アリーナに居座る関係者たちをマイクで観客席に誘導する場面がよく見られたが、今回は1度もなかった。

 大会中、選手関係者が一番知りたいのは、自分の試合があと何試合後なのかどうかだ。自分の試合が行われるマットの進行具合が気になるが、試合直前までマットサイドに近づけない代わり、マットサイドに特大サイズの試合番号表を掲示した。森下審判長は「すべて手作りです。台紙も4色に色分けして分かりやすくしました」とスムーズな試合進行のために工夫した一面を振り返った。

 また、チャレンジ(ビデオチェック要求)の際に必要なビデオモニターを1面に2つ設置。チェアマン側とジャッジ側に設置したことで、以前より多くの観客がチャレンジ時に一緒に確認できるようになった点も好評だった。

■5年前の恩返し 熊本地震に約9万円の募金集まる

 今大会では、4月の熊本地震への義援金の募金を行った。会場に設置した募金箱には6月11・12日の2日間で9万288円が集まり、熊本県協会に寄付された。2011年3月の東日本大震災では茨城県も被災。水戸市も被害が大きく、今回の会場となった青柳公園水戸市民体育館では、併設されているプールの排水管が壊れてしまい、利用できない状況が続くなど爪痕は今も残る。

 そんな被害に見舞われながらも、そのわずか3ヶ月後に全国中学生選手権はいつも通り水戸市で開催された。それができたのは、全国からの支援があったからに他ならない。今回はその恩返しとばかりに、沼尻会長の鶴の一声で、九州地方から参加した選手に伊調馨選手(ALSOK)のサインやリュックなど7団体から募った記念品を贈呈し、勇気づけた。

 今年はリオデジャネイロ・オリンピックが行われる。4連覇がかかる伊調選手は、この大会に女子が始まった年の優勝選手(1999年)。伊調選手をはじめ、多くの選手がこの舞台で経験を積み、飛躍した。

 オリンピックの登竜門とも言える全国中学生選手権の進化はまだまだ続く。

前年までと同じく、最優秀選手賞の副賞は自転車

得点ラケットの不足分は、うちわを改造して手作りで乗り切った こちらのほうが軽くて使いやすい!?