※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 山梨県から初めてフリースタイルの関東チャンピオンとなった安楽龍馬(山梨・韮崎工)
安楽の初優勝を見届けた文田敏郎監督は「実は山梨県勢として初のフリースタイル関東王者です」と、うれしそうにつぶやいた。韮崎工は昨年、グレコローマンで8階級中5階級を制するなど、毎年多くのグレコローマン王者を輩出している。
2012年ロンドン・オリンピック金メダリストの米満達弘の母校で知られている韮崎工は、高校では珍しくグレコローマンにも力を入れているチーム。文田監督は「高校からレスリングを始めた選手に、上位に入って実績をつくらせ、自信を持たせたい」という理由で、高校から始めた選手を中心にグレコローマンにエントリーさせている。
米満もこの大会ではグレコローマンで出場して優勝し、飛躍した一人だ。
■ライバル不在に、「自分が絶対に優勝しなければいけない」
安楽はキッズ出身でフリースタイルでの実績もある。文田監督が安楽にどちらに出場したいか質問したところ、安楽は迷わずフリースタイルを選択したそうだ。「梅林太朗(東京・帝京)選手とインターハイ前にもう一度対戦したかった。チャンピオンに挑むためにフリースタイルにしました」。 決勝で闘う安楽龍馬
ライバル不在でモチベーションが低下していた安楽に、文田監督は課題を与えた。「ポイントをやらないようにしなさい」。安楽はリードを奪うと安易に守りに入ってしまい、後半追い上げられて失点するくせがあった。
文田監督は「攻撃的なスタイルで、取りに行けば得点できる選手なので、ポイントをやらないという目標を持たせて、最後まで攻めさせることを意識させた」と振り返る。
今回、“守ったのは”監督との約束だけ。試合では最後まで攻め抜いて、全試合無失点で優勝。梅林との再戦はかなわなかったが、別の面で大きな成長を見せた。文田監督は安楽の優勝に目を細めたが、本人は「この優勝では喜べない。今回もタックルの処理があまりよくできなかった」と反省の弁。視線はすでに8月のインターハイへと向いていた。
安楽は今年3月の全国高校選抜大会、学校対抗戦では決勝まで進んで鹿屋中央(鹿児島)に敗れて2位。個人戦では学校対抗戦で勝った鹿屋中央の選手に敗れて初戦敗退だった。今大会で団体初優勝を果たした日体大柏(千葉)なども力をつけてきており、全国制覇のハードルは厳しさを増すことが予想される。
それでも安楽は力強く語った。「日々の練習を大事にして、反復練習をしっかりやって、インターハイでは団体、個人ともに優勝を狙います」-。