※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 優勝を決め、応援席にガッツポーズの鴨居正和(自衛隊)
鴨居は大会初日(27日)に24歳の誕生日を迎えた。「試合中に誕生日を迎えた大会だったので、優勝できてよかったです」と、自ら誕生日に花を添える優勝を飾った。
65kg級は全日本王者の前田翔吾(クリナップ)、2位の藤波勇飛(山梨学院大)がともに不在という状況で、誰にでもチャンスがある中、抜け出したのは昨年の世界選手権で日本男子最高成績の5位を収めた鴨居だった。
昨年12月の全日本選手権は、リオデジャネイロ・オリンピックを目指して61kg級から階級アップを決意したものの、2回戦で前田に敗れてリオへの道は断たれていた。鴨居は「天皇杯(全日本選手権)の時は階級を上げたばかりだった」と振り返ったが、2月のアジア選手権(タイ)を含めて今回が3度目の65kg級への挑戦。半年間、体作りにも力をいれてきた。
■12月の全日本選手権が本当の勝負
「65kg級にも慣れてきて、闘い方も分かってきた」と自信をつけたのが功を奏し、初戦は学生相手にテクニカルフォール、準決勝は学生時代からのライバル、阿部宏隆(サコス)に先制を許すも、4-2と逆転勝ち。決勝では65kg級で長年トップ選手として活躍してきた田中にも逆転勝利を飾った。 終盤に勝負をかけた鴨居
「ラスト30秒になると、やらなくちゃいけない、と開き直れる」と反撃に転じ、バックポイントで2点。3-2と逆転すると、残り数秒で田中が強引にがぶりにきたところを確実にテークダウンしてさらに2点を追加した。鴨居は「無我夢中で、何で取ったかも覚えていません」と苦笑いを浮かべ、最初から積極的に攻められるようにとの反省の弁を口にした。
鴨居にとってうれしかったのは、オリンピック階級で全日本選抜選手権の頂点に立てたことだ。「61kg級で優勝しても、非オリンピック階級ということで誇れるものではなかった。今回の優勝で少しだけ自信になりました」。強豪選手が欠場した大会とはいえ、鴨居にとっては価値ある全日本選抜のタイトル獲得となった。
今回欠場した藤波は大学の後輩だが、「藤波君は強い。最近練習してもなかなか点数が取れない。僕の一番の壁になる選手だと思います。12月の全日本選手権は出場してくると思うので、その時にもう一度勝って本物の65kg級のチャンピオンになりたいです」と力強く抱負を語った。