※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
5月27~29日にロシア・ヤクーツクで行われた男子フリースタイルのロシア選手権の57kg級で、地元出身の元世界王者ビクトル・レベデフの試合であまりにもひどい地元びいき判定が行われ、試合後に両陣営がもみあいとなる出来事があった。
試合後に乱闘騒ぎとなったビクトル・レベデフ(赤)とイスマイル・ムスカエフの試合 |
問題となったのは、準々決勝のレベデフとイスマイル・ムスカエフの一戦。0-2とリードされたレベデフが第1ピリオドの終了間際、カウンターで反撃しバックへ回ったが、ムスカエフは片ひざもつくことなく、両手が場外へ出た。
0点、もしくは場外ポイントによる1点のケースだが、レベデフに2点が入る。ムスカエフ陣営はチャレンジしたが、認められず、レベデフが3-2でリード。第2ピリオド、ムスカエフが40秒ころにテークダウンを取ったかに見えたが、判定は場外による1点。
それでも3-3の同点で、このままならラストポイントでムスカエフの勝利。レベデフはスタミナが切れたと見えて防戦一方だが、ここで、なぜかムスカエフにアクティブタイムが与えられ、30秒で得点できなかったため警告が課せられ、レベデフが4-3とリードし、タイムアップ。
ムスカエフの怒りは審判に向くべきだが、なぜかレベデフに向けられ、胸を突いた。レベデフも反撃。ムスカエフがレベデフのあごを突くなどし、両陣営がマットに上がって小競り合いへ。メディアによると、警察も沈静化のためマットに上がったという。
攻勢と思われる選手がラスト34秒にアクティブタイムを取られ、勝利を奪われた決勝(赤がレベデフ) |
決勝に進んだレベデフは、ここでもアレクサンダー・ボゴモエフとの試合で大苦戦し、0-1とリードされて終盤へ。ボゴモエフがレベデフを場外に出したり、優勢に攻めているように見えたが、ラスト34秒でボゴモエフにアクティブタイム。30秒間を無得点に終わり、1-1となってレベデフの手が上がった。
乱闘は起きなかったが、納得のいかないボゴモエフは長い時間マットを降りずに抗議の意思表示。主催者もあまりにもひどい判定だったと認めたようで、公式記録で両者1位にする珍事で大会が終わった。
ロシアのオリンピック代表は、この大会の成績のほか、国際大会の実績などで選考されるが、レベデフは「自分の名誉のため、オリンピックの出場は辞退する」と、オリンピック出場放棄を宣言。レベデフ自身がこの判定のおかしさを痛感していたようだ。
この騒動は米国のCBC放送や「FOXスポーツ」「スポーツ・イラストレーテッド」の電子版などでも「名誉」を強調する表現などで大々的に報じられ、ロシアのライバル国でも注目の出来事となった。
ロシア協会は2日に会見し、レベデフも引き続きロシア代表の候補であることを明らかにしたが、だれも得をしなかった地元びいき判定だった。