※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
オリンピック連覇の道がつながったハミド・スーリヤン(イラン)
スーリヤンは、3月のアジア予選(カザフスタン)で日本の太田忍(当時日体大=現ALSOK)に初戦で敗れ、世界予選第1戦(モンゴル)では2回戦で元世界王者のイボ・アンゲロフ(ブルガリア)に逆転負けを喫して出場枠獲得を逃していた。2度の予選とも「減量にトラブルがあった」と、精彩を欠いた理由を明らかにした。
今大会は「オリンピックの最後のチャンスのため、減量をきちんとやってきた」と余念なく調整を行ったという。そこでのスーリヤンは、絶対王者だった以前の強いスーリヤンだった。初戦から決勝まで、すべて2分以内でテクニカルフォール。しかも無失点で勝ち抜いた。内容も、バックポイントを奪って、すぐに強烈な連続ローリングで仕留めるという、いつもスーリヤンの動きだった。
イランは男子12階級中11階級で出場枠を獲得しており、スーリヤンの階級だけが残っていた。これで、男子両スタイルの全階級で出場できることになった。 ドミトリ・チムバリユク(ウクライナ)に速攻の胴タックルを決めたスーリヤン
59kg級は、階級区分変更により、以前の55kg級と60kg級の強豪が集まる激戦区となり、最終予選には、スーリヤンを筆頭に、3月の欧州選手権2位のロマン・アモヤン(アルメニア)、2013年60kg級世界王者のイボ・アンゲロフ(ブルガリア)、ロンドン・オリンピック60kg級2位のラバズ・ラシュキ(ジョージア)、同55kg級3位のピーター・モドス(ハンガリー)など、元世界王者やオリンピック・メダリストらが多数残っている“地獄のトーナメント”だった。
前日の抽選で、強豪選手は軒並みスーリヤンと反対のブロックに入ったものの、イラン選手が政治的な理由(注=公式には、そうした理由はつけていない)によって試合を行わないイスラエルと同じブロックになり、イスラエルが勝ち上がれば、準決勝で対戦するトーナメントだった。
そのため、2回戦のイスラエル対ウクライナ戦に注目が集まった。結果的に、ウクライナのドミトリ・チムバリユクがフォール勝ちして準決勝に駒を進め、スーリヤンは無事にマットに上がることになり、勝ち抜くことができた。
そのチムバリユク戦で、目のさめるような胴タックルからグラウンドに持ちこんで、あっという間に勝負を決め、オリンピックの権利を獲得すると、スーリヤンよりもセコンドのモハマド・バナ監督が感極まって目を真っ赤にして勝利を喜んだ。
晴れてオリンピックを決めたスーリヤンは「やっとリオの出場権が取れ、よかったです。次の目標は、リオのゴールドメダルを獲ることです」と、2大会連続金メダルを目標に掲げていた。
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スーリヤンと歓喜の抱擁、そして涙ボロボロのモハマド・バナ監督 |