※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 初の全国制覇に笑顔の谷山拓磨(京都・京都八幡)
谷山は京都八幡の伝統ともなっているローシングルタックルを駆使して山口からテークダウンを奪う。2度目のタックルでは、すかさず山口の足を極めてアンクルホールドを3度決めて10-0。あっという間に勝負を決めた。
谷山は「3回戦からすべて強い相手でしたので、気を引き締めて臨んだ。うれしいけど、優勝した実感が沸かないです」と、初タイトルに戸惑いの声をあげた。浅井努監督も「このような(短期決着な)展開になるとは思っていなかった」と目を丸くしたが、京都八幡は昨年の学校対抗戦で優勝したチーム。今年も60kg級の志賀晃次郎ら軽量級は充実した戦力を誇っていた。
浅井監督は「谷山はこれまで2番、3番が多かった。志賀らといいスパーリングは積めていたし、仲間から刺激はもらい、試合に向けていい仕上がりができていた」と、チームメートとの切磋琢磨で谷山の実力も自然と向上していたことを振り返った。
特に力を入れていたのがアンクルホールド。浅井監督は「オリンピック出場を決めた樋口黎選手(日体大)もそうだが、全日本の舞台を見ても、軽量級はアンクルホールドが主流です」と、タックルでテークダウンを奪い、アンクルの連続技で得点という形をとことん練習させたようだ。「日頃の練習の成果が出た結果」と、成長した谷山を褒め称えた。 決勝を圧勝で勝ち、ガッツポーズ
今回は、「前回は無双などいろいろな技でやられてしまって、その怖さはあったんですが、今回はチャレンジャーとして挑もうと思いました。何をするかは決めていて、思った通りに攻めることがえきました」と、緊張や不安も背負いながらも、自分の力を100パーセント出し切ることができたようだ。
約1年前に不覚を喫した相手にリベンジしての全国制覇。その原動力となったのは、学校対抗戦の敗退が大きかった。「今年も学校対抗戦で優勝できると思っていたのに、できなかった。今大会は個人戦で優勝できたけど、団体で連覇できなかったという心残りもあります」。その悔しさを個人戦に向けたことも勝因のひとつだった。
「その悔しさは夏の大会に向いているか?」と問うと、谷山は「インターハイで優勝できるように頑張ります」と力強く宣言した。