2016.03.22

オリンピック出場枠獲得の渡利璃穏(アイシン・エィ・ダブリュ)が帰国

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 カザフスタン・アスタナで行われたリオデジャネイロ・オリンピックのアジア予選に出場し、出場枠獲得に加えて優勝という快挙を持ち帰った女子75kg級の渡利璃穏(アイシン・エィ・ダブリュ)が3月21日、成田空港着に帰国した。

 空港にはテレビ局3社を含め、20人を超える報道陣が待ち構えていた。渡利は「優勝して帰国できたことは、オリンピックに向けての第一歩。たくさんの方々に迎えられて、優勝した実感がわいてきました」と第一声。

 従来の階級より2階級上の階級であることに加え、女子でただ1階級残っていた階級ということで、精神的な重圧は厳しかったことが予想されるが、「絶対に枠を取ってオリンピックに行く、という気持ちを強く持って挑んだ。至学館の先輩や後輩と一緒にリオ行く、という気持ちだったので、プレッシャーはなかったです」と言う。

 2月末には右すねの疲労骨折が判明。別メニューの練習を余儀なくされるなど、必ずしも思い通りの大会前ではなかったが、現地では「すねの調子よくて痛くなかった、体力も落ちていなかった」と言う。

 食事面などマルチサポートの全面支援もあって体重面での問題もなく闘え、優勝に結びつけることができた。「決勝ではタックルに入って押し負けていたので、もっと体重を増やしてパワーをつけたい」と言う一方、「今まではリードすると守りに入ってしまったが、今回は最後まで攻めることができた。強い選手2人(モンゴル、カザフスタン)に勝てたことは進歩」と振り返った。

 オリンピックの日本代表は22日からの全日本合宿で決まる予定だが、「最後まで全力でやり、日本代表になれるよう全力でやりたい」と話す。もし代表に決まったら、「まずはメダル圏内に入れるよう力をつけ、最後は金メダルを取って帰れるように頑張りたい」と前を向いた。

■チームジャパンの勝利…木名瀬重夫コーチ

 栄和人強化本部長は「大会前の渡利を見て、出場枠を取れるのでは、と思い始めた。優勝して、オリンピックでもメダルを取れるのでは、という想定もあった。しかしモンゴルの選手を見た時、体の大きさが違ったので、この選手に勝てるかな、と心配になった」と、心の動揺を打ち明けた。

 しかし見事に勝利し、「決して弱くはない選手」と評価する決勝相手のグゼル・マニュロバ(カザフスタン)にも勝ち、「オリンピックのメダルに近づいていることを実感した」と言う。「75kg級の代表がメダルを取れれば、全6階級でメダルを取れるのでは、という気持ちになっています」と、今夏の決戦へ向けての確かな手ごたえを放した。

 メダルの色を問われると、「だれがどう、ということでなく、うまくいけば金5はいける。最低でも2つ。これからの強化で確実性を増していきたい」と話した。

 強化本部長として、男子両スタイルで4階級の出場枠を取ったことも顔色がいい理由のひとつ。「オリンピックのメダルがちょっと見えてきた、という感じ」と話し、残る2大会に全力を尽くさせる気持ちを話した。

 木名瀬重夫コーチ(日本協会専任コーチ)は「出場枠を決めた時の志土地(翔大)コーチの大泣きが印象深い。もらい泣きをしてしまった。本当によくやった」と、渡利の努力のみならず、チームジャパンとしての勝利と評価した。

 なお、同級の日本代表は、22日からの全日本合宿で渡利と世界7位、アジア1位などの実績のある鈴木博恵(クリナップ)が競い、強化委員会が決める。