※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
スウェーデンから帰国した女子チーム
吉村祥子監督(エステティックTBC)は「カデットもジュニアもいい経験ができたすばらしい遠征でした。24選手の大所帯で行かせていただいた協会に感謝したい」と総括。
カデットはロシアの選手が体もよく、「勝ち抜けるかな」という不安もあったそうだが、「日本人特有の動くレスリングがしっかり展開できた。もっとパワーをつけなければならないけれど、今のレスリングを貫いてほしい」と言う。
ジュニアは「国際舞台の経験の浅い選手を含めてメンタルが強かった。全階級でのメダル獲得はならなかったけど、くらいつくレスリングをやってくれた」と言う。
一昨年の世界チャンピオンを破って優勝した69kg級の古市雅子(日大)に関しては、「まだ粗いところもあるけれど、すごい潜在能力を見せてくれた」と、世界2位の選手に惜敗した53kg級の向田真優(JOCエリートアカデミー/東京・安部学院高)は「あと一工夫で勝つことができた。アウェーで苦しんだ部分もあった。必ず次に生きてくれる内容だった」と、それぞれ評価した。 メダル獲得のカデット選手。前列左から田南部夢叶、須崎優衣、奥野春菜、屶網さら、後列左から南條早映、近藤凛、宮道りん、森川美和、松雪泰葉。
「どの選手も自信を持ったと思う。この経験をジュニアクイーンズカップで生かしてほしいし、参加できなかった選手も、参加した選手を目標に切磋琢磨してほしい」と、国内のし烈な闘いを期待した。
大会と合宿をやったクリッパン市は、アフリカからの難民を多く受け入れており、昨年までの宿舎のひとつは1200人の移民の宿舎になっているなど、市そのものの環境が大きく変わっていた。来年以降、宿泊施設の確保も大変らしいという。すぐに大会中止とはならないようだが、多くの国が参加して試合と練習のできる機会は失いたくないところ。
吉村監督は「貴重な遠征。ぜひ今の規模で続けてほしい」と祈願した。
■ともに「国内で勝たなければ意味ない」…金の古市雅子&銀の向田真優
古市は、先制し、いったん逆転されながら、再逆転した粘りの優勝で、先月のヤリギン国際大会(ロシア)での初戦敗退の屈辱を晴らしたシニアの国際大会で初優勝だ。
「ヤリギンの初戦敗退が悔しく、今回は絶対に優勝したかった。うれしいです」と振り返る。4失点という反省はあるものの、片足タックル、両足タックルとも決まり、きちんとポイントを取っての勝利だった。
しかし、手放しの喜びというふうでもない。「前世界チャンピオンに勝っても、日本で勝てるということではありません。これから日本で勝てるよう頑張りたい」と言う。合宿では75kg級の選手ともやり、力が違うと感じた。外国選手相手にはもっとパワーをつけなければならないと感じ、この優勝で喜んではいられないといった様子だ。 シニア参加のメダル獲得選手。左から加賀田葵夏、三輪奏歩、向田真優、古市雅子、熊野ゆづる、矢後愛佳、川井友香子。
53kg級の向田は、決勝で吉田沙保里選手のライバルとして有名なソフィア・マットソン(スウェーデン)に4-6で敗れて悔しい2位に終わった。マットソンは向田にとっても目標の選手。昨年11月のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)でも闘う可能性はあったが、その前に負けてしまって実現しなかった。今回、出てくることが分かり、「ソフィアさんと絶対に闘いたい」と頑張れ、決勝進出を果たせたという。
決勝戦の試合順は古市の方が先で、古市が前世界チャンピオンを破る快挙を成し遂げ、気合が入ったというが、一歩及ばなかった。「左脚を取らせてしまったことが痛かった。自分の片足タックルは途中でブレークとなり、課題が多く見つかった」と反省し、ジュニアクイーンズカップまでに立て直したいという。
5-1で勝った準決勝の (ロシア)も、世界選手権の55kg級で2位になっている強豪だった。「大きくて力が強かったです」。そのため、「ソフィアさんが軽く感じた」とのことだが、「片足を3度も入られたりして、駄目な面が出た」と反省する。
53kg級世界2位と接戦、55kg級世界2位に勝ったという事実は、向田の実力が世界トップ級であることを意味するが、」古市と同じで、「まず国内で勝つことが必要。国内で勝って世界選手権に出たい」と気を引き締めた。今年は世界選手権がないため、昨年、国内で負けて出場できなかった世界ジュニア選手権の出場へ向け、4月のジュニアクイーンズカップに全力投球!