2016.02.25

男子フリースタイルの全日本チームが新装なった味の素トレセンで合宿スタート

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 男子フリースタイルの全日本チームが2月24日、マットがリオデジャネイロ・オリンピック仕様に変わった東京・味の素トレーニングセンターで合宿をスタートした。

 アジア選手権(タイ・バンコク)が終わってから初の合宿。練習前に、同選手権を指揮した井上謙二コーチと鈴木豊コーチ(ともに自衛隊)が、大会で展開されていた技術やルールを報告。井上コーチは「前に詰めていく方が有利。攻める動きをしていても、下がっているとアテンションが課せられる。キャッチしてからちゅうちょしているとポイントにつながらない。素早くテークダウンに持ち込むことが必要。そのあとのグラウンドの攻撃も速くなくてはならない。防御はその逆」とアドバイス。

 鈴木コーチは「勝ってる選手は、よく攻めて自分からポイントを取りに行っていた。どんな体勢からでもポイントを狙っていた」と報告し、場外際の攻防の時の注意を説明。「追い詰められて投げを打っても、リスク(失点にならず、スタンドになること)は取ってくれず、相手のポイントになってしまう」など、具体的な事項をいくつか説明した。

 この合宿中に、大会のビデオを全選手に見せ、技術とルールの研究をするという。

 和田貴広・男子フリースタイル強化委員長(国士舘大教)は「本番まで24日。アジア選手権の結果(メダル0)があっても、慌ててはならない。今までと同じように集中して練習するように」と、代表選手に焦って自分を見失うことのがないようにリクエストした。

 「毎回同じことを言うが、試合のつもりで打ち込みをやり、試合のつもりでスパーリングをやらなければ意味がない。練習している相手は外国の選手だと思え。試合のつもりで練習することが本番につながる」と、実戦を想定しての練習を望んだ。

 スパーリングは1面マットで1組。場外際の攻防を含めて試合に近い状況をつくる。1組に1人のコーチが見守って適宜アドバイスを送ることで、戦術の確認を行いながらのスパーリングを実施した。

 同委員長は、アジア選手権のビデオを見て、「日本選手はコンタクトしてからが弱く、場外際に追い込む圧力も弱い」という感想を持ったという。そのため、練習の最後にはグレコローマン流の差し合い、押し合いの練習を行い、弱点の克服に努めた。

 アジア選手権の結果を、「気を引き締めるための結果」ととらえ、カザフスタン決戦まで全力を尽くす。

■ロンドン出場枠を取った縁起のいいアスタナに向かう高谷惣亮(ALSOK)

 74kg級の高谷惣亮主将(ALSOK)は「アジア選手権で史上初のメダルなしという結果に終わりましたが、ボク自身は勝つための練習をやってきている。自分のやってきた練習が間違いでないことを証明するためにも、アジア予選ではベストを尽くして闘います」と、アジア選手権で日本が惨敗しても、「自分は勝つ」と言わんばかり。

 アジア選手権にどんな選手が出てきて、どんな闘いをしていたか気になると思われたが、「だれが相手でも自分のレスリングを貫くだけ。相手の闘い方を知って、こうやろう、なんて付け焼刃では勝てない」と言い、特別な関心はなし。機会があればビデオを見るが、必要以上の知識は詰め込まず、「だれが相手でもぶれないレスリングをやる」と話す。

 2013年の世界選手権(ハンガリー)で7位入賞を果たしたあと、常に世界レスリング連盟(UWW)のランキングでランク入り(20位以内)していたが、昨年の世界選手権(米国)で上位進出を逃したことで外れてしまった。「あっという間に消えてしまいましたね(笑)。『高谷はもう駄目だ』と思ってくれてもいいですけど、アジア予選では、やはり研究されてくると思う。相手に惑わされず、自分の技を出していきたい」と言う。

 決戦の地、カザフスタンのアスタナは、4年前のロンドン・オリンピックのアジア予選の開催地でもある。高谷はその2年前のアジア大会3位の2選手を撃破してオリンピック出場枠を獲得した。縁起のいい場所であり、「一度行っているので、落ち着いてできると思います」と追い風がある。

 しかし、「その再現ですね」の声に、「再現なんて目指しませんよ!」ときっぱり。前回は、出場枠獲得を決めたあとの決勝でウズベキスタン選手に1-2(2分3ピリオド制)で敗れ、2位に終わっている。「今回は絶対に優勝です。優勝してオリンピックに行きます」と力強く宣言した。

■元ロシアの強豪の参戦にも、「気持ちで負けない」と前田翔吾(クリナップ)

 アジア選手権の70kg級では、ロシアの元世界選手権代表のアダム・バティロフ(バーレーン)が優勝。アジア予選では65kg級への出場が予想されることになった。

 同級代表の前田翔吾(クリナップ)は「予想はしていました。そんなに差があるとは思っていない。全日本選手権もそうでしたが、ボクはだれが相手でもきん差で勝つタイプ。どんな試合であっても、最後に自分の手が上がっていればいいと思っている。課題を持ちすぎず、最後に自分の手が上がることだけを考えて闘うだけです」と、元ロシアだからといって特別に意識するつもりはなし。

 バティロフの参戦で、より気持ちが盛り上がっているのは事実で、「だれが相手でも気持ちで負けずに闘います」と話した。

 なお、同レスリング場のマットは今月18日、東洋大選手の協力のもと、約7時間をかけて6面とも交換。キャンバスは紺色を基調としてゾーンがオレンジ色という最新版に変わった。これまでのマットより「やや硬い」というのが大方の声だった。

和田貴広強化委員長による技術指導

ロンドン代表の湯元進一コーチに挑む樋口黎(日体大)

前田翔吾(右)のスパーリングを湯元健一コーチと和田強化委員長が見守る

ブシロードの永田裕志監督(左)も参加、山口剛の練習を見守る