※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 昨夏の悔しさをばねに優勝を勝ち取った内山皓太(茨城・霞ヶ浦)
昨年3月、名将・大澤友博前監督が勇退し、入江和久監督の新体制になった霞ヶ浦。
大澤先生がいなくなっても内容は変わらず、入江先生と厳しい練習をしてきました。部員は少なくなりましたが、その分、先生に教えてもらえる時間は増えました」と、内容の濃い練習を積めたことで実力を伸ばしてきた。
決勝の相手は、前日に学校対抗戦で優勝した韮崎工の下山田。前半に内山が豪快なタックルを決めて4点を先制するが、下山田もスタンドからの内山を倒して4点。4-4と同点に追いつかれてしまった。
焦って攻め急ぎすぎてやられるタイプだった内山に、入江監督は「無駄にタックルに行くな。冷静に攻めろ」と繰り返し指導してきたという。そのおかげで、4-4の同点になっても内山は無理に攻めることなく、同点のまま折り返した。「昔なら、無理に攻めていたけど、今回は、相手を見ることができた」。
組んだら、投げ技や足技など大技を仕掛けてくるのは、韮崎工の必勝パターン。それを見越した内山は、後半に入ると相手の手も触れないほど遠い間合いで試合を展開し、機が熟した終盤、高速タックルを何本も決めて下山田を突き放した。
■忘れられない昨年のインターハイ・学校対抗戦決勝の悔しさ
内山は昨シーズンからレギュラー入りを果たし、埼玉栄(埼玉)とインターハイの決勝で対峙(たいじ)したときも、74kg級に出場していた。 決勝で闘う内山
その勝負の分かれ目だったのが74kg級の内山-八木海里の2年生対決だった。内山が負けたことで埼玉栄の優勝がほぼ確実になってしまった。入江監督は「敗因は3年生が負けたこと。2年生の内山が負けたことが敗因ではない」と話したが、内山自身は「自分が勝てばチームは優勝できたはず。ずっと悔しさが残った」と、半年間、その悔しさを内に秘めて練習を積んできたと言う。
「八木には高校に入って3回対戦しているが全敗でした。いつも同じ技にやられてしまう。インターハイで負けた時も入江監督に指摘されました」。集中力が切れてくる後半に右足が前に出るくせがあり、ローシングルを取られて負けるというのが負けパターンだった。この半年間は6分間集中できるように練習を積んできたそうだ。
その成果が出て、今大会の2回戦で八木にリベンジ。そこで勝つことにより、個人戦でも全国高校選抜大会に出場する資格を得ることができた。霞ヶ浦は昨年、学校対抗戦を初戦敗退し、全国高校選抜に出場することができなかった。内山にとってはうれしい初出場だ。「団体、個人ともに今回が初の全国選抜大会になります。最初で最後の大会なので、絶対に優勝できるようにしたいです」と力強く目標を掲げた。