※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 全日本マスターズ選手権に初出場初優勝の清水真理子さん
清水さんは約12年ぶりの試合に、「周りからは『(第一線でやっていた)経験があるから大丈夫』『簡単に勝てるでしょう』と言われましたが、とても緊張してしまいました」と心情を吐露。
普段は高校のレスリング部コーチとして、選手とともに練習をしているので、レスリングそのもののブランクはないが、試合と練習はまた別の感覚がある。マットを目の前にすると、ものすごい緊張感に襲われてしまったという。
「全力でやるしかない」と、決勝は開始直後にタックルからすぐさま押さえ込みに入り、ワンアクションでフォール勝ち。「相手も全力で来るから、私も全力で返すのが礼儀だと思いました。けれども、それだけ余裕がなかったということです」と久々の試合を苦笑いしながら振り返った。
■毎年、審判員として参加していた全日本マスターズ選手権だったが…
清水さんは、毎年この大会は審判員として参加していた。「生涯レスリングを掲げて闘っている姿を見て、本当に素晴らしいと思っていた」と、選手からのエネルギーをもらっていた。しかし、試合出場となると、「私は29歳まで現役を続けさせてもらいました。当時としては長く競技をやりましたので、もう出ることはないと思っていました」。マスターズに出られる資格がありながら、自ら出場しようという気持ちは、全くなかったと言う。 豪快な一本背負いを見せた清水さん
2人は出場を快諾したが、一つだけ条件を出された。「真理子先生も一緒に出てください」―。もう二度と試合はしないだろうと思っていた清水さんにとって、思いもしない展開だった。「確かに、2人は初めて試合に出るわけで、いろいろ不安も出てきます。私が勧めた以上、私にも出場すべきなのかなと思いました」と、仲間の熱いラブコールで元世界銀メダリストの清水さんの気持ちが動いた。
エントリー締め切りのぎりぎりまで出場か否かを悩んだそうだが、試合後は「やってみてよかった」とすっきりした表情を見せた。12年ぶりの試合をやり遂げ、元日本代表として世界を相手に闘った血が騒ぎだしたようだ。
昨年の世界ベテランズ選手権(ギリシャ)から女子が採用され、日本選手として誰が最初に出場するか話題になっている。その白羽の矢は、清水さんにも向けられているといっても過言ではない。「仕事や、高校生の指導がメーンなので即答はできませんが、非常に興味があります」と笑顔で回答。条件がそろえば、今年10月の世界大会(ポーランド)に参加する可能性も示唆した。
![]() 教員仲間の今井美智代さん(左)と小沼由紀子さん(右)とともに |
![]() 現役時代の清水さん=1997年世界女子選手権(フランス) |