2016.01.16

【特集】創立80周年を迎える東日本学生連盟・多賀恒雄会長(明大教)に聞く=(下)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

《上》から続く=1月11日、東京・味の素トレーニングセンター/聞き手=樋口郁夫


 ――競技人口の減少を防ぐ、という普及の観点で言うなら、どの大学にもキッズと中学生の教室の開講を義務づける、というのも一案ではないでしょうか。それらの選手が必ずその大学に行くとは限りませんが、時に大学生と練習させたり、大会の応援をさせたりして、大学レスリングに接する機会を増やすことも、将来の普及につながると思う。キッズ・中学生のクラブがない大学は、大会への参加を認めない、とか。

 多賀 それは極端だな(笑)。キッズを指導できるスタッフがいるかどうですね。

 ――話をリーグ戦の階級の問題に移したい。2014年から97kg級と125kg級を一緒にして実施しているわけです。以前、「オリンピック階級を実施しないのはおかしいのでは?」と質問しましたが、「連盟の正規の手続きの上で決定だ」との回答でした(クリック)。しかし、「多数決、必ずしも正しくあらず」です。世界で通じる選手を育てる、という強化の観点からして、オリンピック階級を実施しないのは、いかがなものでしょうか。全日本コーチの全員が「問題ない」と言うのであれば、私の考えを改めますが…。

 多賀 多数決が必ずしも正しくないのは理解できるが、最終的に多数決をもって運営していかなければ、連盟は成り立たない。一部の人の考えのみで運営する独裁的な連盟にするわけにはいかない。個人的には、97kg級は必要だと思う。オリンピック階級の6階級か、世界選手権の8階級でやるべきだと思っているが、執行部から階級数変更の提案をするつもりはない。(97kg級の選手は)リーグ戦で以外の大会では97kg級をやっているし、そこで力を発揮してほしい。

 ――全日本学生連盟の管轄だと思いますが、今年は学生の冬の遠征がなくなりました。参加する大半が東の選手なので、東日本学連の問題としてお聞きしたい。

 多賀 強化という観点からして、あの遠征が本当に役立っていたのかどうか、という問題はあった。選手の動機づけになっていたことは確かだが、もっと効果的な強化方法があるような気がする。学生選手にとって、アメリカのトップ選手が参加する大会はレベルが違いすぎる場合がある。1、2試合やって、それだけで帰ってくる、が強化と言えるのか。合宿するなど、強化のやり方を変える必要はある。

 ――遠征の内容を変えて、復活を目指してほしい、ということでしょうか。

 多賀 そうなりますね。

■リーグ戦の土日曜日開催には大きな壁

 ――大会の日程についてお聞きしたい。東日本学連の主管で行われた昨年の全日本学生選手権ですが、8月18~21日という時期が非常に評判が悪かった。例年、夏の一番の強化の時期であり、世界ジュニア選手権(ブラジル)に参加した若手有望株が参加できなかったり、帰国直後での参加を余儀なくされた。

 多賀 評判がよくないことは耳に入っていて、十分に承知している。駒沢体育館の日程からして、どうしょうもなかったことを理解してほしい。同体育館は半年前に使用が決まり、東京都の大会や毎年開催の大会などが優先される(注=全日本学生連盟は東と西で1年交代)。昨年の場合は、その日程しか取れなかった。

 ――日体大が大学の体育館を8月下旬に4日間貸し出す、と言ってくれた。それを受けることはできなかったのか。

 多賀 駒沢に決まったあとの申し入れだった。キャンセルするのは、駒沢体育館に対してのみならず他の団体に申し訳ない。レスリングが使うというので、その時期の使用をあきらめて別の日程にした団体があったかもしれない。隔年開催すらやらない、となると、この先、永久に駒沢体育館が使えなくなる可能性もある。苦渋の決断だったことを分かってほしい。

 ――1964年東京オリンピックのレスリング会場だった駒沢体育館ですが、そんなに取りづらいのなら、そこを離れることも一案だと思う。

 多賀 隔年開催の同じ期日に確実に取れる、という体育館があれば、一考の価値はある。ただ、駒沢体育館は場所がいいし、マットを置いてもらっているので輸送の経費や時間がかからない。東京の郊外や東京以外でやるとなれば、また別の問題が生じる可能性がある。

 ――駒沢体育館の事情からして、東日本学生リーグ戦の土日曜日の開催も、かなり困難な状況ですか?

 多賀 やりたい気持ちは十分にあるが、厳しいのが現状だ。毎年、土日曜日に必ず貸してくれる体育館があればいいが…。

■西高東低の女子、まず各大学に強化をお願いしたい

 ――東日本学連の女子の強化についてお聞きしたい。リオデジャネイロ・オリンピックには現段階で5階級、西の大学(至学館大)の学生選手か出身選手が出場する。場合によっては全6階級。この現状を、どうお考えになりますか?

 多賀 2010年に東日本学生女子選手権をスタートさせ、女子の強化にも取り組んできたが、女子の強化練習などをやったことがないのが現状だ。全日本女子連盟や日本協会とのつながりを密にして強化する必要があると思うが、まず各大学の努力によって強くなってほしい。そのうえで連盟がまとめる、というのが理想だと思う。東には女子専門でやっているチームがない。そのあたりが至学館大に遅れをとっている一因だと思う。

 ――西日本学生連盟は11月の最後か12月の最初に秋季リーグ戦があり、これが連盟としての年間の最後の大会。閉会式のあと学連委員の交代式をやり、裏方の人たちの苦労を全選手でねぎらう、という場がある。対して、東日本学連はそうした場がなく、秋季の新人選手権が最後で、1年生~4年生全選手が集まって打ち上げをする、という場がない。学生スポーツとして、西日本学連のような場があってもいいのでは、と思います。

 多賀 東日本学連は毎年2月の理事会の時、学連の交代式・ご苦労さま会をやって裏方の人たちの労をねぎらっている。

 ――闘っている多くの選手は、だれが学連委員長で、だれが大会を支えているかを知らないまま卒業する場合もある。みんなが闘えるのは、大会運営に尽力している人がいることを知らせるのも、学生連盟のあり方だと思う。

 多賀 各大学にそうした指導はしているし、してほしい。ただ、補助員をなかなか出してくれない大学もあって残念な面はある。

 ――今後の東日本学生連盟の発展を期待します。