※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
フリースタイルの最優秀選手賞を獲得した藤波勇飛(山梨学院大)
決勝の相手は、この階級の全日本学生選手権2年連続2位、今年の全日本選抜選手権3位の浅井翼(拓大)。そんな選手に勝つ底知れない実力を見せたのだから、全日本選手権の65kg級に出場する他の選手に大きな脅威を与えた形だ。
しかし、優勝後の藤波は「勝った気が全くしません」と浮かない顔。「相手も負けた気がしないんじゃないですか」と続け、技をかけてのポイントがない消化不良の試合を振り返った。
試合は、藤波が先にアクティブ・タイムを取られ、30秒間攻撃できずに0-1。第2ピリオドは藤波が優勢をとり、浅井にアクティブ・タイム。20秒すぎに浅井の手が藤波の顔を再三突いた形となってコーションを取られ、1-1。残り9秒で浅井がポイントを取れなかったため、さらにコーションが加わって藤波が2-1とリード。そのスコアで終了した。両者とも技を決めることができず、お互いに不完全燃焼の内容だったのは確かだ。 お互いに決め手に欠いた決勝だが、藤波(青)が1点差で勝つ
■「全日本選手権までに、やることをしっかりやりたい」
強い選手の場合、実力アップのため本来より上の階級で闘うことはよくある。しかし、重い選手相手では、けがをする危険性も高くなる。全日本選手権まで1ヶ月を切った段階では無理をさせないのが普通ではないか。しかし、小幡邦彦コーチは「新人選手権なら、2階級上で勝つくらいの強さが必要。負けたら負けたで、必ず得るものがあるはず」として出場させた。
ふだんの練習でも、80kgを超える選手ともやっているという。74kg級への出場では減量がまったくないそうだから、練習の一環くらいの感覚でやらせたのだろう。
藤波はその期待に応えてきっちりと勝ち、今年1年間、フリースタイルでは学生に負けなしを続けた。いよいよ全日本チャンピオンの期待がかかるが、「まだまだでず。全日本選手権までに、やることをしっかりやりたい」と気を引き締める。「今年は1年生ということで、伸び伸びできた。来年は今年以上に研究もされるでしょうし、もっと実力をアップさせなければなりません」と、これからが勝負だという姿勢を示した。