※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 羽衣国際大の選手としてこの大会に初出場した橋本勇一
羽衣国際大の選手としては初出場だが、本人は3回目の出場となる。実は、大阪・高石高から関西医療大に進学し、「レスリングを続けたい」という気持ちをもって部を創設。部員一人のチームとして活動し、昨年は西日本学生新人戦と西日本学生選手のグレコローマン80kg級でともに3位入賞の成績を残した選手だ(クリック=2013年11月18日記事)。
一見、順調に進んでいるように見えたレスリング人生だったが、残念ながら大学の理解は得られなかった。父でもあり、コーチでもある橋元勝利さんは「柔道部は認めているのですが、レスリング部には一切の待遇がありません」と説明する。大会出場のみならず、計量日であっても公欠扱いはなく、“授業を欠席”して臨むことになる。
関西医療大へ進んだのは接骨師を目指していたからだが、卒業するためにはレスリング活動をやめるしかない状況となった。卒業か、レスリングか。迷った末にレスリングを選び、接骨師への道は卒業後に専門学校へ通って目指すことを決めた。この春、実家に近くレスリングへの支援もしてくれることになった羽衣国際大学の3年生に編入。同大学の選手としてあらためて活動することになった。
ここまでしてレスリングに情熱を燃やす選手も珍しい。格闘技は他にもやってきたそうだが、「レスリングは一番難しい格闘技。ひとつ知らないことをクリアすることで、技が広がり、どんどん闘いが広まる。難しいからこそ、挑む楽しさがある」との理由で続けているという。
チームには新入部員も入り、1人は大学に入学後にレスリングを始めた選手の大会「アルキメデス・カップ」で優勝した選手。少しずつだが、いい方向へ向かっていっていることは間違いない。
ただ、レスリング場はなく、高石高のほか、大体大、関学大、桃山学院大などの練習に加わって汗を流す日々。大学が休みの時は他大学の合宿に加わって集中的に強化する。橋本は「まず自分一人でできる練習はしっかりやりたい。スパーリングの本数が少ないのは仕方ないが、他大学の練習に加わった時に全力でやりたい」と話す。
「冬の間も練習は休まず、工夫してやっていきたい。来年も大阪府の大会を含めて出られる大会はすべて出て、どの大会でも妥協しないで頑張りたい」と話す橋本の最終学年での目標のひとつは、リーグ戦に出場すること。「体の大きい子でも小さい子でも、細い子でも太い子でも、来てくれれば必死に教えます」と、来年の希望を話した。