※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 松坂誠應(日体大)
もっとも松坂に喜びの表情はなかった。勝利直後はマットに座り込み、ガッツポーズらしきアクションはなく、インタビューでも反省の弁が続いた。長崎・島原高時代には全国タイトルはなく、そこからはい上がって3年生にして学生二冠王者に輝いたのは立派な成長と思われるが、「決勝はテクニカルポイントを取れなかった。改善しなければならないところです」と、内容に満足いかなかったようだ。
8月の対戦も3-1での勝利。「自分の形でポイントを取ることのできない相手」とのことで、同じ相手に同じような展開しかできなかったところに、進歩を感じられなかったのだろう。「取るところをしっかり取り切る力をつけないと…」と、学生二冠を制したとは思えないようなムードだった。
ひとつ前の試合で木下貴輪(山梨学院大)が負けていれば、日体大の団体優勝をかけた一戦になるはずだった。木下が勝ったため、優勝はほぼ山梨学院大のものになってしまい(注=厳密には、125kg級決勝のオレッグ・ボルチンの勝ち負けにもかかわっていたが、圧倒的強さのため、木下の勝敗が山梨学院大の勝敗と考えられた)、モチベーションが低下したことも考えられた。 決勝で闘う松坂
反省の弁が多かったが、危ない体勢になってもポイントをやらず、接戦を勝ち抜く力をつけていることは間違いない。それを指摘されると、「入学直後に比べると、接戦でも競り勝つ力がついていることは間違いないですね」と、ちょっぴり笑顔。結果として学生二冠を取れたことはうれしいらしく、「今年は勝つことが多く、いい1年でしたね」と振り返った。
年末には大きな闘い(全日本選手権)が待っている。「このままでは勝てないでしょう。しっかり修正して、松本篤史先輩(ALSOK=世界選手権代表)に勝てる実力を身につけたい。そんなに大きな差はない、(差は)勝つ、という気持ちだと思います」と話し、学生二冠獲得をステップに、リオデジャネイロへの道に挑む。