※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=保高幸子) 圧勝続きで3年連続優勝の太田忍(日体大)
チームの主将として、個人、大学対抗得点とも優勝が目標だった。初日の結果からして、この日出場する4選手全員が優勝しても、拓大がよほどとりこぼさない限り団体優勝は厳しい状況となったことは認めざるを得なかったが、主将として他の3選手のモチベーションを上げることが必要だった。
そのためにも、最初の自分が負けるわけにはいかなかった。「全部出し切って勝とう」と他の選手とともに闘争心を鼓舞し、臨んだ最終日だった。「団体優勝できなくて残念です」と悔しそうだが、個人では、5試合すべてで8-0のテクニカルフォール勝ち。かかったタイムは、25秒、1分30秒、48秒、26秒、1分4秒で、平均が50秒。「少しもすきを見せないよう頑張りました」と振り返った。
今年は3月のハンガリーGPで優勝するなど、冬場に十分に実力をたくわえたが、6月の全日本選抜選手権で2位。世界選手権の出場を逃し、場合によってはリオデジャネイロ・オリンピックの日本代表が早々と内定してしまう状況だった。
そんな中、全日本学生選手権と国体は66kg級に出場。「もう2020年東京オリンピックを視野に入れているのでは?」といった声もあったほどだが、「(リオデジャネイロ)オリンピックへのモチベーションはなんとか維持してきました」と言う。
日本代表争いが振り出しに戻り、この階級でアジア2位などの実績を持つ太田への期待が高まって来た。太田は「まだ全日本を取ったことがないので、期待や評価に追いつけていないのが現状です」と戸惑いを見せつつ、12月の全日本選手権は「挑戦者として、絶対に勝つ、というつもりで臨みます」と気合を入れる。
団体優勝できなかった無念さをエネルギーに変え、太田がリオデジャネイロ・オリンピックの日本代表を目指す。