2015.09.21

男子両スタイルの世界選手権代表チームが緊急集合、福田会長が自ら技術指導!

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 世界選手権(米国・ラスベガス)で来年のリオデジャネイロ・オリンピック出場枠獲得がゼロだった男子両スタイル。オリンピック前年の世界選手権で枠取りに失敗したのは初めてという緊急事態を受け、日本協会の福田富昭会長が男子の世界選手権代表とコーチ陣の全員を9月20日、東京・味の素トレーニングセンターに招集した。

 世界選手権での成績不振の責任をとって福田会長がスキンヘッドにした経緯もあり、男子両スタイルのコーチ陣の多くが丸刈りや短髪にして登場した。

 当初はミーティングだけの予定だったが、予定を急きょ変更して練習会に。福田会長自らTシャツにジャージ姿で登場し、「結果がすべて。(オリンピックの)資格が一つも取れていないのは、何か欠点があるからだ。体力や技術は(世界に)劣っていない。やる気と闘争心に欠けていることが問題」と、コーチ陣と選手全員に熱弁した。

 ラスベガスの試合で技術的に気になった部分を福田会長自らデモストレーション。フリースタイル陣には、タックルを仕掛ける足は、前に出ている足より、後ろに下がっている足だと指摘。もし前に出ている足を狙った場合は、そのままくぐってかつぐ技に変化する動きもアドバイスした。

 グレコローマン・チームには、胴タックルが基本で踏み込みが大切であること、3メートル先に相手がいると思って踏み込むこと、グラウンドのクラッチは相手との距離を密着させること、の3点を重点的に指導した。

 栄和人強化本部長は「女子の国際成績が悪い時に直接指導していた記憶はあるが、男子では珍しい」と話すように、福田会長が男子の全日本合宿で直接選手を指導するのは十数年ぶり。それだけオリンピック前年での成績不振に福田会長も危機感を覚えているということだ。

 福田会長は「男子がオリンピックに出られなかったら、大変なこと。ヘルシンキ・オリンピックからの伝統が途切れてしまう。ロンドンで米満(達弘)が金を獲ったのだから、(リオデジャネイロでも金メダルを)獲れなくはない。“鉄は熱いうちに打て”ということで、選手の欠点を直すため1時間半ほど教えました。実技でやってみせないと分からないこともある」と自ら指導を展開した理由を振り返った。

 定期的に行うかは選手次第。「(今回の指導で)ダメだったら、何回もやらないと」とも話し、選手のレベルが停滞していたら、今後も福田会長自らテコ入れが入るかもしれない。

 直接指導を受けたフリースタイルのエース、74kg級代表の高谷惣亮(ALSOK)は、「福田会長は理論的にレスリングの基本的な動きを指導してくださった。あらためてその基礎をやってためになりました。基本もできていないのに、応用をやろうとしても身になりませんから」と基本を再確認した様子。

 練習中も会長が真っ先に高谷に声をかけ、タックル時の頭の位置など細かく指導した点について、高谷は「期待されているのかなと感じた。僕自身もうれしかった」と、会長からのアドバイスを身につけて、半年後のオリンピック予選通過を誓った。