※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美、撮影=矢吹建夫) 大健闘だったが、最後は勝利で飾れなかった川井梨紗子(至学館大)
今大会では、川井の方が63kg級の誰よりも小さく見えたが、「スピードレスリングで勝負したい」と、初戦で昨年優勝のユリア・トカチ(ウクライナ)と対戦し3-0で勝利。その後も、横の動きで相手を揺さぶり、片足タックルで得点を重ねるという技の展開で勝ち上がり、準決勝も突破して、日本協会の規定によってオリンピックの出場をほぼ決めた。
準決勝での勝利を決めると、両手でガッツポーズ。目には涙を浮かべて喜んだ。だが、これが落とし穴だった。金メダルを狙った決勝で2010年59kg級世界チャンピオンのバドゥーチェグ・ソロンゾンボルド(モンゴル)に、開始早々、タックルに行ったところを浴びせ倒しを受けて背中からマットに。そのままフォールされてしまった。
川井は銀メダルを片手に「オリンピックが決まって、うれしかった。(吉田)沙保里さんのように、チャンピオンになってオリンピックに行きたいと思っていたけど、どこかで安心してしまったし、初戦が世界チャンピオンだったから、そこで勝てば、とも思ってしまった」と反省の弁。金メダルは、来年までお預けとなった。
リオデジャネイロで金を取るためには、相手に63kg級の王道レスリングをされた時に、2階級下の川井が軽すぎることは課題かもしれない。けれども、川井は「体重を63kg級に増やすつもりはないです。58kg級のスピードを生かして、“レスリング”の部分で勝負したい。モンゴルのような選手には、正面から攻撃したらきつい。組み手や横から攻めるレスリングをやり直してきます」と、スピードと技でオリンピックを制することを誓った。