※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫) 2年生で学生王者に輝いた木下貴輪(山梨学院大)
多胡島とは昨年も決勝で顔を合わせ、この時はテクニカルフォールで敗れた。「あれは1年前の試合。マイナスのイメージはなかった」と強気に振り返った木下あ、序盤からディフェンディングチャンピオンとがっぷり四つの試合を展開。
「タックルに入ってもなかなか点数が取れず苦しかった」と言うが、何とかポイントは奪い、2-2の同点ながら内容でリードして試合は終盤へ。残り10秒を切って多胡島の猛攻を食らったが、これをしのいで栄冠を手にした(多胡島陣営のチャレンジ失敗でスコアは3-2)。
出身地の鹿児島県は過去にのべ15人のオリンピック選手を輩出したレスリングの盛んな土地。木下は鹿屋中央高で頭角を現し、高校時代にフリースタイル66kg級で高校三冠(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)を獲得した。大学入学後は昨年のアジア・ジュニア選手権で銀メダル。派手なタイプではないが、一歩一歩着実に力をつけてきた印象だ。 逆転を狙う多胡島の最後の猛攻をしのいだ木下(青)
こうした日々の練習でレスリング・スタイルに磨きをかけた。十分に距離を取り、動きながら崩してタックルに入るスタイルに加え、接近戦からの崩しを覚え、攻撃の幅を広げたこともインカレ制覇につながった。
70kg級は非オリンピック階級なので、オリンピックを目指すなら将来は階級を上げることになる。現在の体重は74kg程度。まだまだ体を大きくしなければならないが、木下は遠くを見るよりも、目の前の一戦を大事に考えている。
「次の目標は内閣総理大臣杯(全日本大学選手権)です。団体の闘いでもあるし、これに勝って今年は二冠を達成したい」。 山梨学院期待のホープがいよいよ乗ってきそうだ。