※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 高校時代からを通じて初の全国タイトルを獲得した原田駿(専大)
このチャンスをものにしたのが原田駿(専大)だった。決勝で昨年の全日本選手権61kg級2位の阿部宏隆(国士舘大)を4-4のラストポイントによるきん差で下し、最終学年にして初優勝を飾った。「これまで高校(長崎・島原)、大学でタイトルがひとつもなかった。すごくうれしいです」と笑顔を見せたが、すぐさま「65kg級は本来、高谷選手や藤波選手がいるので、優勝した気になれないですね」と苦笑しながら付け加えた。
だが、本命不在と知ったことでモチベーションが上がったことも事実だ。「藤波が出ないと知って優勝するチャンスだと思った」と、これまでの最高成績である昨年の全日本大学選手権3位以上の成績を目指して仕上げてきた。
決勝は4年生同士の対決となり、互角の闘い。阿部はこれまで61kg級を主戦場としていたため、高校時代を含めて初対決だった。先手は阿部が取ったが、すぐさま原田も取り返して2-2。終盤まで試合は拮抗(きっこう)し、このまま時間がくればラストポイントで原田が勝つという状況だった。
「いつも勝っているのに終盤に逆転されてしまうのが僕の課題」という原田は、この日もラスト30秒に苦戦する。終盤の阿部のラッシュを防ぎ切れず、ついにテークダウンを許してしまった。歓喜に沸く国士舘の応援席。
だが、原田は「粘りがないと佐藤(満)コーチらに指摘されていた」という課題を克服。得点後の阿部を返して逆にニアフォールで押さえ、2点をもぎ取ってそのまま試合終了のブザーが鳴った。「準決勝の米沢(圭=早大)戦も決勝も同じパターンだった。2試合とも最後に攻めることができて勝てた。初めて気持ちで粘れました」。
課題を克服できた理由を、原田は「専大で練習を積んだことが大きいです。コーチ陣や仲間に恵まれて、強くなれました」と振り返った。一気に学生王者に駆け上がった勢いで、11月に学生二冠王者に挑戦することを宣言した。
![]() 課題だった終盤の粘りを発揮できた原田(青) |
![]() 努力家の快挙に、専大選手は大歓声 |